本サイトでは1000を超えるラテン語の名言名句を詳しく説明しています。ラテン語文法を学べば、それぞれの意味が手に取るようにわかります。手始めに「ラテン語格言50選」をご覧になり、ぜひお気に入りのラテン語を見つけてください。本サイトで紹介しているラテン語を理解できるようになれば、あなたもカエサルやウェルギリウスの作品を原文で読むことが可能です。
ラテン語入門
ラテン語文法を学ぶねらい
本サイトではカエサルやキケロー、ウェルギリウスの作品をじかに読めるようになることを目標にします。文法を学ぶのはそのために必要です。「文法を一通り学んだ人」とは規則を丸暗記した人のことではなく(もちろんできるに越したことはないのですが)、文法用語をある程度知っていて、辞書の使い方も知っている人のことです。
あとは講読の授業に継続的に参加したり、自分で辞書と翻訳を頼りにラテン語の原文を読むことによって、末広がりにラテン語の力はつくでしょう。
独習する人の場合、『ガリア戦記』から始めるのが定番です。リンク先の『ガリア戦記』の解説ページをご覧になって、「こういう資料があれば勉強がはかどる!」と思われたらkindle版の資料をお求めいただき、勉強を続けてください。「文法用語が難しい!」という印象の方は、この「ラテン語入門のページ」で知識を補い再挑戦してください。
すでにラテン語を学んだことのある人で、どこから手を付けたらよいか知りたい方は、「しっかり学ぶ初級ラテン語」(ベレ出版)の例文リスト(pdf)に目を通し、自分の力をチェックしてください。ラテン語だけを見て意味がとれるかどうか、どのような理屈で横に添えた日本語訳が成り立つのか、わかるでしょうか。少しでもあやしい例文があればチェックを入れて、教科書や辞書を使って知識の補充を行ってみてください。
ラテン語文法の基本(目次)
以下の目次とリンク先の解説は拙著『しっかり学ぶ初級ラテン語』(ベレ出版の教科書)をベースにしています。ここに載せた例文を読んで意味が理解できるようになれば、辞書と解説を参考にしてカエサルやキケローの原文を読んで楽しめるようになります。
ラテン語の読み方
名詞
形容詞
代名詞
動詞
分詞、動名詞、動形容詞
その他
- 副詞
- 前置詞
- 比較
- 数詞
- 非人称構文
- 絶対的奪格
- 疑問文
- 格のまとめ
- 主格のさまざまな用法
- 属格のさまざまな用法
- 与格のさまざまな用法
- 対格のさまざまな用法
- 奪格のさまざまな用法
ラテン語学習のヒント
ラテン語学習がマンネリ化したら息抜きに読んでみてください。「ラテン語学習で一番大事なことは何か?」と尋ねられたら、「とにかく続けること」と答えたいと思います。
- 文法は地図、講読は旅
- ラテン語を学ぶって?
- 文法の勉強に疲れた人へ
- 文法の教科書を終えた人のために
- ラテン語学習に必要な3つの道具
- ラテン語アンケートFAQ
- ラテン語愛好家のみなさんへ
- そうだ、ラテン語やろう!──今なぜラテン語なのか(山の学校HP)
- 「そうだ、ラテン語をやろう!」(ベレ出版のnote)
ラテン語名言・名句集
- ラテン語の格言: 本サイトのラテン語の格言カテゴリー:投稿順に並んでいます。リンク先にラテン語の名言・名句が並んでいます。それぞれに日本語訳と詳しい文法の説明がついています。
- 学生の選んだラテン語名言: 大学で授業していたころの学生のレポートをランダムに載せています。
- ラテン語格言50選: 短く印象深いラテン語の名言名句を50選びました。座右の銘を見つけてください。
ラテン語を学ぶには?
- ラテン語学習の基本は変化(曲用)と活用の暗記です。
- 暗記した成果はラテン語クイズで確認できます。
- ペースメーカーとしてラテン語講習会(後述)や私の主催する「ラテン語メーリングリスト」、山の学校主催の「ラテン語の夕べ」を利用する手があります。
ラテン語メーリングリストでは『しっかり身につくラテン語トレーニングブック』を教科書とした勉強会を行っています(無料)。
辞書は必要か?
- 教科書を使って学習する段階では辞書はなくても間に合います。教科書を読む上で必要な語彙は、巻末にまとめて、あるいはその都度示されるのが普通です。
- 「しっかり学ぶ初級ラテン語」の単語集(pdf)
辞書は何がよいか?
教科書レベルを卒業し、原典読解に挑戦するならしっかりとした辞書が不可欠です。お勧めの辞書は、「ラテン語の辞書・教科書」のコーナーで紹介しています。個人的には研究社の『羅話辞典(改訂版)』をお勧めします。
ペルセウスプロジェクトのLatin Word Study Toolは変化・活用形で検索できます。
画面のGreekをLatinに変えて検索します(初期設定ではGreek)。例として、amor(愛)の単数・属格のamoris(←母音の長短は無視)で検索した結果が次の画像です。
左端に太字でamorと出ています。その右端に、基本的な意味として love, affection, strong friendly feelingという英訳が出ています。amorのすぐ下に (Show lexicon entry in Lewis & Short Elem.Lewis)とあります。amorという単語をLewis & Shortで調べるか、Elem.Lewisで調べるかのチョイスです。大は小を兼ねるので、Lewis & Shortをクリックします。その結果が次の画像です(amorの意味と用例が表示されます)。
ためしにamorの単数・対格のamorem(noun sg masc acc)を入力したり、amorum(noun pl masc gen)を入力したりして、検索結果を確認してみてください。amorの変化形のどれで調べても、amorの意味と用例にたどり着けます。
第3変化名詞は複数・属格が-umか-iumか迷う場合があります。amorでいえば、amorumかamoriumか迷うとします(いずれも母音の長短は無視)。ためしに、amoriumで検索すると、次の画面(”Sorry, no information was found for amorium”)が出るので、amorの複数・属格は、amorium でなくamorum だとわかります。
ラテン語を楽しく独習するには?
私の教科書をお使い下さい(笑)。解答付きです。このサイトで紹介しているラテン語の名言・名句の多くを例題、練習問題に使っています。学習者の感想はとても参考になります。
マイペースでラテン語に親しみたい人にお勧めなのが、ラテン語の名言名句の本です。気に入った言葉が見つかれば、手帳に書き写してみるなど、自分なりに工夫して楽しんで下さい。日本語で書かれたラテン語名言集のラインナップは次の通りです(出版年順)。
- ギリシア・ローマ名言集 (岩波文庫) 柳沼 重剛
- ローマが残した永遠の言葉―名言百選 (生活人新書) 小林 標
- ラテン語名句小辞典 野津 寛
- ローマ人の名言88 山下 太郎
ラテン語を通って学べるところ
「ラテン語を通って学べるところは?」と聞かれたら、私の主宰する私塾「山の学校」の古典語クラスを真っ先に紹介したいと思います。100メートルの山の上にあり、京都市内の眺めは抜群です。もっとも、ほとんどのクラスがzoom対応なので、海外在住の先生や会員もおられるのが現状ですが。
「山の学校」は現代の寺子屋のようなもので、小学生から大人までが熱心かつ楽しく様々な分野の勉強を学んでいます。スクール・モットーは「ディスケ・リベンス」(Disce libens. 楽しく学べ)です。
日本西洋古典学会HPに「ギリシア語・ラテン語を学べる私塾」のコーナーがあり、これも参考になるでしょう。京阪神編と関東編、名古屋編があります。
ラテン語講習会
ラテン語講習会を月に一度ずつ開いています(Zoom対応)。文法クラスと講読クラスがあります。ラテン語学習のペースメーカーとしてご利用下さい。
ラテン語講習会から誕生した注釈書
以下の三冊は、講習会の資料に手を入れ、kindleで読めるようにしたものです。
1)ウェルギリウス『アエネーイス』第1巻序歌に特化した注釈を書きました(Kindle 出版)。
一字一句の文法と語彙の説明を詳述し、逐語訳、意訳、韻律の説明、文法のまとめ、単語集を付けてあります。
2)カエサル『ガリア戦記』の注釈書です。
3)キケローの「スキーピオーの夢」の解説書もあります。これは紙媒体が基本ですが、kindle版もあります。『しっかり学ぶ初級ラテン語」と同じベレ出版から出ています。
リンク先のアマゾンのレビューは好意的で励みになります。1パラグラフの解説を書くのにも膨大な時間を要するので、苦労が報われます。
ラテン語講習会の特典
ラテン語講習会受講生の場合、私が代表を務めている「山の学校」の入会金を無料とさせていただいています。「山の学校」ではラテン語、ギリシャ語、漢文をはじめとする諸言語の入門、講読クラスを開講しています。詳しい活動内容はホームページをぜひごらんください。
ラテン語のこと、ラテン語講習会のこと、なんでもお尋ねください。
ラテン語とは?──ラテン語を学ぶ上での予備知識
ラテン語の古典作品
ラテン語とは何か? 本サイトでは「ローマ帝国の公用語」と答えたいと思います。本サイトで紹介している「ラテン文学」とは、ローマ時代の文学作品――およそ二千年前のカエサル(Caesar)やキケロー(Cicero)、ウェルギリウス(Vergilius)やホラーティウス(Horatius)らが活躍した時代の文学――を意味しています。ラテン文法は、この時代のラテン語作品を読み解くうえで必要不可欠な知識であり道具です。
現代に生きるラテン語
そもそも、ラテン語とはどのような言語なのでしょうか。かつてある大学でラテン語を教えていたとき、「私はラテン音楽が好きなので、ラテン語の授業を選択しました。でも、イメージと全然違ってました」と言われたことがあります。ラテン音楽とは南米の音楽 のことで、一見ラテン語と関係ないと思われるかもしれません。しかし「ラテン音楽」の歌詞は、いずれもスペイン語やポルトガル語という共通性があり、これらの言語を生み出した「母親」がほかならぬラテン語なのです。
ラテン語は今あげた二つの言語に加え、フランス語(French)、イタリア語(Italian)、ルーマニア語(Rumanian)、カタロニア語(Catalan)といったロマンス諸語(Romance Languages)を生み出す母胎となりました。フランスやイタリアのことを「ラテン・ヨーロッパ」と呼んだりするのも、これらの国の言語――フランス語、イタリア語――がラテン語から生まれた事実に基づいています。
ラテン語(Latin)は、当初はイタリアのラティウム(Latium) で用いられた言葉でしたが、やがてローマ帝国の公用語として広く用いられるようになりました。「ラテン文学」というのは、南米の文学を指すのではなく、ラテン語で書かれた文学作品――とりわけ前一世紀、カエサル(Caesar)やキケロー(Cicero)、ウェルギリウス(Vergilius)らが活躍した時代の文学――を意味しています 。
四世紀以降になるとラテン語はキリスト教の公用語としての地位を確立し、広くヨーロッパ社会に宗教的、文化的影響を与えることになります。また、ルネサンスを経て18世紀に至るまで、ラテン語はヨーロッパの学問研究の共通言語としてとりわけ重要な役割を担いました。
ラテン語は死語か
二一世紀の今日、言語学的にラテン語は「死語(dead language)」と呼ばれますが、文化的に死語ではけっしてありません。「漢字(Chinese character)」の誕生は紀元前の中国に遡りますが、漢文化の影響を受けた日本人は、今も漢字を用いることによって新しい文化創造を行っています 。同様に、ラテン語の圧倒的な影響を受け続けたヨーロッパ人は、自国の言語を用いながらも、そこに見出せるギリシア・ローマ文化の影響を無意識のうちに「今」に生かし、「未来」に伝えているのです 。
ラテン語を勉強して何の足しになるのか?という問いはよく耳にします。しかし、それを説明するためには、たとえば、日本文化を理解する上で、漢字を学ぶことの意義を説くのと同じ苦労を覚悟しなければなりません。川が上流から下流に流れるように、私たちが日々接している英単語や、広い意味でのヨーロッパ文化の源流が、ギリシア・ローマ文化ということになります。川を上流へ遡り、山の中でわき出る泉を見つける新鮮な驚きが、これらの古典語を学ぶと経験できるでしょう。
たとえば、英単語を覚える際、「医者は毒を取るからドクトル(doctor)」と語呂合わせで綴りを覚えても、英単語のこころ――その成り立ちの秘密――に迫ることはできません。日本語の「有り難う」という言葉についても、外国人には、その発音を真似て「アリゲーター(alligator)」と結びつけて覚えてもらうよりも、この言葉の成り立ち――「有ることが難しい」、つまり相手だけでなく自分を包み込む一切への感謝――をなんとか説明してあげたいところです。
doctor の語源について言えば、この単語はラテン語で「教える」という意味の doceo(ドケオー)にたどり着きます。ラテン語で -tor の形は行為者の名詞を表すので、doctor とは「教える人」というニュアンスを持つことがわかります。ちなみに、大学の先生の肩書きに出てくるPh.D. (ピー・エイチ・ディー=博士号)は、doctor philosophiae (ドクトル・ピロソピアエ)の略語で、「哲学を教える資格をもつ人」の称号です。Ph.は「哲学」のことですが、手元の英和辞典を引くと、「医学・法学・神学以外の全学問」を意味するとあります。哲学が学問の代名詞とみなされた時代の名残です。
このように、一見見慣れた英単語の一つ一つにも歴史があるわけです。漢字の偏と旁(つくり)にそれぞれ意味が込められているように、英単語の成り立ちを語源に即して分析すると、そこから様々なメッセージをくみ取ることが可能となるでしょう。必要なのは、ちょっとした好奇心と冒険心です。
最近の英和辞書を手に取ってみると、語源の説明が特に充実しています。一つの言葉からまた別の言葉へと頁を繰るのは楽しい知的冒険であり、時には、お茶を片手にそういった説明を「読む」のも一興ではないでしょうか。司馬遼太郎氏が「ニューヨーク」の意味を問うことから始めたように、英単語のこころに迫る入り口は無限に開いています。そして、その扉を開くカギとなるのがラテン語の知識であるという言い方はできるでしょう。