分詞(現在分詞・完了分詞・目的分詞・未来分詞)

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分詞は動詞を元にして作られる形容詞です。ラテン語の分詞を時称に即して大別すると、現在分詞完了分詞未来分詞の3つに分かれます。このうち完了分詞から派生した目的分詞(スピーヌム)にも注意する必要があります。

目次

現在分詞

現在分詞は、現在幹に-nsを加えて作ります。

規則動詞の現在分詞

amō (1)  愛する amans, amantis
videō (2) 見る videns, videntis
agō (3) 行う agens, agentis
capiō (3B) つかむ capiens, capientis
audiō (4) 聞く audiens, audientis

amōを例に取ると、amansの単数・属格が amantisです。-isの語尾からわかるとおり、現在分詞は第3変化形容詞(i幹形容詞)の変化をします。ただし、単数・奪格は、-eで終わり(-īでない)、複数の男性・女性対格は-ēsで終わります(-īsでない)。

不規則動詞の現在分詞

dō 与える dans, dantis
eō 行く iens, euntis
ferō 運ぶ ferens, ferentis
volō 望む volens, volentis
sum である (現在分詞はない)
absum いない absens, absentis

不規則動詞sumの現在分詞はありませんが、absum やpossum 等の合成動詞には現在分詞があります(absum→absens、possum→potens)。

現在分詞の形容詞的用法

リンク先に詳しい文法の解説があります。

  1. Omnia eunt mōre modōque fluentis aquae. 万物は流れる川のように移ろいゆく。
  2. Amor ex oculīs oriens in pectus cadit. 愛は目から生まれ胸に落ちる。
  3. Crescentem sequitur cūra pecūniam. 増える金銭には心配事が付き従う。
  4. Tacens vōcem verbaque vultus habet. 沈黙した顔は声と言葉を持つ。
  5. Eunt annī mōre fluentis aquae. 年月は流れる水のように進む。

1のfluentisはaquaeにかかります(「属性的用法」)。
2のoriensはAmorと性・数・格が一致します(「述語的用法」)。
3のCrescentemはpecūniamにかかります(「属性的用法」)。
4のTacensはvultusにかかります(「属性的用法」)。
5のfluentisはaquaeにかかります(「属性的用法」)。

現在分詞の名詞的用法

リンク先に詳しい文法の解説があります。

  1. Amantēs, āmentēs. 恋する者は正気なし。
  2. Nihil difficile amantī. 恋する者には何事も困難ではない。
  3. Quis fallere possit amantem? 愛する者をだれが欺くことができるだろう。
  4. Cēde repugnantī. 抵抗する者には譲歩せよ。
  5. Dūcunt volentem fāta, nōlentem trahunt. 運命は望む者を導き、欲しない者をひきずる。
  6. Merentem laudāre jūstitia est. ほめるに値する者をほめることは正しいことである。

完了分詞

英語の過去分詞に相当します。「~された(状態の)」という受動の意味を表す形容詞として名詞を修飾したり、sum の変化と組み合わせて受動態を作ったりします。

完了分詞の形容詞的用法

完了分詞は形容詞として用いられます(中には形容詞として辞書に登録されるようになった完了分詞もあります)。

  1. Graecia capta ferum victōrem cēpit. 征服されたギリシャは野蛮な勝利者を征服した。
  2. Victī vīcimus. 我々は負けて勝ったのだ。
  3. Parātus exīre sum. 私は死ぬ準備ができている。
  4. Jūcundī actī labōrēs. 行われた(=終わった)仕事は心地よい。
  5. Ducis in consiliō posita est virtūs mīlitum. 兵士たちの勇気は、指揮官の戦略に置かれている。

1のcaptaはGraeciaにかかります(「属性的用法」)。
2のVictīは省略された主語Nōsと性・数・格が一致します。「負けた我々は」とせず、「我々は負けて」と訳すと自然です。このVictīの使い方を「述語的用法」と呼びます。
3のParātusは動詞parōの完了分詞からできた形容詞です。
4のJūcundīはactīにかかります(「属性的用法」)。述語的用法とみなすと、「仕事は終えられて心地よい」、すなわち「仕事は終わると心地よい」と訳せます。
5のpositaは形容詞として用いられています。posita estをpōnōの直説法・受動態・完了、3人称単数とみなすと、「兵士たちの勇気は、指揮官の戦略に置かれた」。

Q&Aとして、「完了分詞の訳し方?」をご覧ください。

完了分詞の名詞的用法

  1. Verba volant, scripta manent. 言葉は飛び、文字は残る。
  2. Facta non verba. 言葉でなく行為が大切。
  3. Exitus acta probat. 結果は行為を証明する。

1のscriptaはscrībō,-ere(書く)の完了分詞ですが、名詞として使われています。
2のFactaはfaciō,-ere(行う)の完了分詞ですが、名詞として使われています。
3のactaはagō,-ere(行う)の完了分詞ですが、名詞として使われています。

受動態との関係

完了分詞は受動態の完了系(完了、過去完了、未来完了)で用いられます。

  • Amāta es. 貴女は愛された。
  • Amātae sunt. 彼らは愛された。
  • Puella amāta est. その少女は愛された。
  • Puerī amātī sunt. その少年たちは愛された。

以上の例において、es, sunt, est の時制はいずれも現在ですが、完了分詞とともに用いられて、直説法・受動態・完了を作ります。完了分詞は主語と性・数・格を一致させています。次に、英語とのずれに注意してください。英語はbe動詞の現在と完了分詞(過去分詞)を組み合わせて、受動態の現在を作りますが、ラテン語ではsumの現在の変化と完了分詞の組み合わせが完了(過去)の受動態を表します。

完了分詞の作り方

第1・第4変化動詞と第2変化動詞の一部は、現在幹(不定法語尾から-reを取った形)に-tus,-a,-umを加えます。この語尾でわかるとおり、完了分詞は、第1・第2変化形容詞bonus,-a,-umと同じ変化をします。完了分詞に不規則形はつきものです。手っ取り早く覚える方法はないので、一つ一つ辞書で確認して下さい。ちょうど英語でwrite、 wrote、writtenと暗記したのと同じことです。

動詞の基本形

ラテン語には「動詞の基本形」と呼ばれる四つの形があります。これがわかれば、動詞の変化形のすべてが導けるので、辞書にはこれらの形を載せています。

amō  amāre  amāvī  amātum

左から順に、(1) 直説法・能動態・現在、一人称単数、(2) 不定法・能動態・現在、(3) 直説法・能動態・完了、一人称単数、(4) 目的分詞(スピーヌムとも呼ばれる)です。「完了分詞」と関係するのが(4)の「目的分詞」です。いきなり「目的分詞」といわれると、言葉にとまどいを覚えるかもしれませんが、amātum のつづりを見ると、「おや?今見た完了分詞じゃないの?」と気づくでしょう。実はそのとおりで、目的分詞amātumは完了分詞の中性・単数・主格(または対格)の形です。語尾を-usに変えれば、完了分詞、男性・単数・主格の形が得られることに注目して下さい。つまり、辞書で完了分詞の形を確認するには、この「目的分詞」の形を見ればよいわけです。

目的分詞

目的分詞は単数のみで、対格と奪格の2つの形しかありません。「動詞の基本形」で確認できる形は、目的分詞の対格の形です。

目的分詞の対格

目的分詞は、一般にその対格を指します。この形は、「行く」や「来る」といった移動を表す動詞とともに用いられ、その目的を表します。「~するために」と訳せます。例えば、cubō(寝る)の目的分詞(の対格)はcubitumですが、Cubitum eō.といえば、「私は寝に行く」という意味です。

カエサルの『ガリア戦記』(1.11) から例を取りましょう。Haeduī lēgātōs ad Caesarem mittunt auxilium rogātum.(ハエドゥイー族は援助を乞うためカエサルに使者を送る。)において、rogātumはrogō,-āre,-āvī,-ātum(求める)の目的分詞、対格です。

suspensī Eurypylum scītātum ōrācula Phoebī / mittimus, (Verg.Aen.2.114-115)
我々は不安に駆られ、ポエブスの神託を伺うためエウリュピュルスを派遣した。(ウェルギリウス)

Spectatum veniunt, veniunt spectentur ut ipsae.
彼女たち自身は(芝居を)見るために来る。(そして)自分たち自身が見られるために来る。(オウィディウス)

目的分詞の奪格

目的分詞には-umで終わる対格形とともに、-ūで終わる奪格形もあります。これは形容詞とともに用いられ、「~することにおいて」と訳します。例えば、dīcō(いう)の目的分詞の奪格はdictūになりますが、facilis dictūは「言うのは簡単な」(=言うことにおいて容易な)、miserābile dictūは「言うも惨めな」(=言うことにおいて惨めな)という意味になります。「言うは易く行うは難し」をラテン語で表すと、Id est facile dictū, sed difficile factū.となります。この文のdictūは「言う」を意味する動詞 dīcō,-ereの目的分詞、奪格です。factūは「行う」を意味する動詞 faciō,-ereの目的分詞、奪格です。

未来分詞

主文の時称より後に起きる出来事について、「~しようとするところの」という意味を表す能動分詞です。未来分詞は、完了分詞の語尾(-us,-a,-um)を-ūrus,-ūra,-ūrumに変えて作ります。この語尾でわかるとおり、未来分詞は第1・第2変化形容詞bonus,-a,-umのように変化します。

能動態・現在 / 完了分詞 / 未来分詞
amō amātus,-a,-um amātūrus,-a,-um
videō vīsus,-a,-um vīsūrus,-a,-um
agō actus,-a,-um actūrus,-a,-um
capiō captus,-a,-um captūrus,-a,-um
audiō audītus,-a,-um audītūrus,-a,-um

時称について補足すると、未来分詞は「今」を基準とした「未来」ではありません。例えば、Amātūrus sum.は「私は(今)愛そうとしている」となりますが、Amātūrus eram.は「私は(過去のある時点で)愛そうとしていた」という意味になります(eramはsumの未完了過去)。

不定法・能動態・未来との関係

未来分詞はesse(sumの不定法・能動態・現在)とともに、不定法・能動態・未来を作ります。esseが省略されることもあるので、注意が必要です。

不定法・能動態・未来の例文

  1. Crās tē victūrum, crās dīcis, Postume, semper. Mart.5.58.1 ポストゥムスよ、明日自分は生きるだろう、明日になれば、といつも君はいう。
  2. Crēdēbās dormientī haec tibi confectūrōs deōs? Ter.Ad.693 おまえは神々がこれらのことをおまえのためにやり遂げるだろうことを信じたのか。

分詞の例文

上の内容をある程度理解したら、あとは数多く例文に当たることです。
>>「分詞の例文」

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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