動形容詞

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ラテン語に独特な用法です。動詞から作られる形容詞です。

動形容詞とは

動詞でありながら形容詞の働きをする動詞、それが動形容詞です。日本語の「愛すべき友」といういい方を思い出して下さい。「愛する」というのは動詞ですが、「愛すべき」という形になると「友」という名詞にかかる形容詞に早変わりします。それと同じ用法です。ただし、ラテン語の動形容詞はひとつだけ注意が必要です。それは受動の意味を持つ点です。amō(愛する)の動形容詞はamandus,-a,-umになりますが、直訳は「愛されるべき」です。

    • amīcus amandus

愛されるべき友(=愛すべき友)(男性)

太字の部分が動形容詞です。形容詞なので修飾する名詞の性・数・格と一致します。女性の友の場合、次のように変化します。

    • amīca amanda

愛されるべき友(=愛すべき友)(女性)

繰り返しますと、「動形容詞」は受動の意味をもちますので、amandusやamandaは「(他人によって)愛されるべき」と訳すのが直訳となります。女性の名前に「アマンダ」や「ミランダ」というのがあります。どちらもラテン語のamandaとmīrandaからできた名前だと思われますが、アマンダさんは「(他人によって)愛されるべき女性」(=(他人が)愛すべき女性」の意味であり、ミランダさんはあまりに素敵な女性なので、「(他人によって)驚かれるべき女性」、(他人が)「驚くべき女性」の意味でしょう。mīrandaは形式受動態動詞mīror,-ārī(驚く)の動形容詞、女性・単数・主格です。同様に、現代語に目を移すと、レジェンド(legend)は、legō,-ere<読む>の動形容詞legendus,-a,-um(読まれるべき)からできた語です。立派な行いは文字によって記録され、後世の人々によって「読まれるべき」という考えからできた語でしょう。メモはラテン語のmemorandumの略語です。memorandumは動詞memorō,-āre(思い出させる)の動形容詞、中性・単数・主格で、「思い出させられるべきもの、こと」が直訳です。すなわち、「思い出すべきもの、こと」、それがメモです。

動形容詞の形

動名詞と同じ作り方をします。また、第1・第2変化形容詞と同じ変化をします。対応する名詞と性・数・格を一致させます。

amandus amanda amandum
monendus monenda monendum
agendus agenda agendum
faciendus facienda faciendum
auiendus audienda audiendum

 

hortandus hortanda hortandum
verendus verenda verendum
utendus utenda utendum
moriendus morienda moriendum
potiendus potienda potiendum

意味と用法

  • 名詞と共に用いられ、受動的な意味を持ちます。
  • 義務、必要、適正の概念を含みます。
    • amīcus amandus 愛されるべき、愛されるにふわしい友人(男性)
    • amīca amanda 愛されるべき、愛されるにふさわしい友人(女性)
  • 形式受動態動詞に関しても、その動形容詞は受動的な意味を持ちます。
    • rēs hortanda 励まされるべき、励まされるにふさわしい(事柄)

動形容詞の述語的用法

    • Hic liber vōbīs legendus est.

この本はあなた方にとって読まれるべきものである。
(この文のvōbīsは人称代名詞vōsの与格で「行為者の与格」と呼ばれます)。

血管は触れられるべきである(血管は触れねばならない)。

カルターゴーは滅ぼされるべきである(カルターゴーは滅ぼすべきである)。

動形容詞の非人称表現

動形容詞が主語を持たずに単独で用いられ、ある行為がなされねばならないという意味を表す場合があり、これを「動形容詞の非人称表現」と呼びます。この場合、動形容詞は中性・単数にし、sumの3人称単数(直説法・現在)のestとともに用います。

老人もまた学ばねばならない。
(この文のsenīは「行為者の与格」です)。

あらゆる事柄について疑われるべき(=疑うべき)である。

自由に向かって出発すべきである。

属格としての動形容詞

    • lubīdō reī pūblicae capiendae Sall.Cat.5

国家を手に入れる欲望(手に入れられるべき国家への欲望)

与格としての動形容詞

実際、春はいわば青春時代を意味し、未来の収穫を約束するのに対し、残りの季節は、収穫を刈って取り入れるのにふさわしい。

対格としての動形容詞

    • Hoc praeceptum ad tollendam amīcitiam valet. Cic.Amic.60

この教えは、友情を損なう力を持つ。

奪格としての動形容詞

    • Simul in spem veniēbant ējus adfirmātiōne dē reliquīs adjungendīs cīvitātibus. Caes.B.G.7.30

同時に彼らは、他の部族を味方につけることについての彼の信念によって希望を抱くに至った。

動形容詞の例文

しかしもし我々が心労から逃れるならば、美徳からも逃げなければならない。
動形容詞の人称表現。

今こそ飲むべし。今こそ自由な足で大地が踏まれるべきときだ。

あなたは自分のしたことから逃れ、すべきことを追い求めている。
faciendaはfaciōの動形容詞の名詞的用法。

    • Superanda omnis fortūna ferendō est. Verg.Aen.5.710

すべての運命は耐えることによって克服されねばならない。
superandaは動形容詞の人称表現。ferendōは動名詞の奪格。

私は他人のやり方で生きなければならない。
動形容詞の非人称表現の例。

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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