代名詞的形容詞

  • URLをコピーしました!

代名詞的形容詞とよばれるもの

1. alius,-a,-ud  他の(other)
2. alter,-era,-erum (2つのうち)他方の(other of two)
3. neuter,-tra,-trum (2つのうち)どちらも~ない(neither)
4. nullus,-a,-um 誰(何)も~ない(no)
5. sōlus,-a,-um ただ1人(1つ)の(only)
6. tōtus,-a,-um 全体の(whole)
7. ullus,-a,-um いかなる人(もの)も(any)
8. ūnus,-a,-um 1人(1つ)の(one)
9. uter,-tra,-trum (2つのうちの)どちら(which of two?)
10. nōnnullus,-a,-um いく人かの、いくつかの(several)
11. uterque,utraque,utrumque 2つのうちどちらも(each of two)

これらの形容詞は、単数の属格と与格で代名詞の特徴を示す変化形を持ちます(属格が-īusで終わり、与格が-īで終わる)。

alius(他の)の変化

男性 女性 中性
単数・主格 alius alia aliud
属格 alīus alīus alīus
与格 aliī aliī aliī

対格 alium aliam aliud
奪格 aliō aliā aliō
複数・主格 aliī aliae alia
属格 aliōrum aliārum aliōrum
与格 aliīs aliīs aliīs
対格 aliōs aliās alia
奪格 aliīs aliīs aliīs

ūnus(1つの)の変化

男性 女性 中性
単数・主格 ūnus ūna ūnum
属格 ūnīus ūnīus ūnīus
与格 ūnī ūnī ūnī
対格 ūnum ūnam ūnum
奪格 ūnō ūnā ūnō
※ūnusには複数はありません。

代名詞的形容詞の例文

alius,-a,-ud

Aliī reminiscēbantur veteris fāmae.
「アリイー・レミニスケーバントゥル・ウェテリス・ファーマエ」と読みます。
aliīは代名詞的形容詞alius,-a,-ud の男性・複数・主格です。この文では「他の者たち」を意味する名詞として使われています。
reminiscēbanturは「<属格>を思い出す」を意味する形式受動態動詞reminiscor,-scī の直説法・受動態・未完了過去、3人称複数です。
veterisは「古い、昔の」を意味する第3変化形容詞vetus,-erisの女性・単数・属格です。
fāmaeは「名声」を意味する第1変化名詞fāma,-ae f.の単数・属格です。
「他の者たちは昔の名声を思い出していた」と訳せます。
ネポースの表現です(Nep.Phoc.4)。

Sed quid ego aliōs?
「セド・クゥィド・エゴ・アリオース」と読みます。
sedは「だが」を意味する接続詞です。
quidは「なぜ」を意味する疑問副詞です。
egoは1人称単数の人称代名詞、単数・主格です。
aliōsは代名詞的形容詞alius,-a,-ud の男性・複数・対格です。この文では「他の人たち」を意味する名詞として使われています。
動詞loquor(語る)が省かれていると考えられます。
「だがなぜ私は他人について(語るのか)」と訳せます。
キケローの『老年について』に見られる表現です(Cic.Sen.45)。

Facile consilium damus aliis.
「我々は他人には容易に助言を与える」。

alter,-era,-erum

alter īdem  第二の自分 Cic.Amic.80
(alter,-era,-erum 第二の īdem 同じ人)

Miserum est arbitriō alterīus vīvere. Syr.412
他人の思惑にしたがって生きることは惨めである。
(miser,-era,-erum 惨めな arbitrium, -iī n. 思惑 vīvō,-ere 生きる)

aliusの属格は本来alīusですが、実際にはalterの属格alterīusを用いることが一般的です。この文では「他人」という名詞として使われています。

    Alter alterīus auxiliō eget. 
    一方は他方の助けを必要とする。
    (auxilium,-ī n. 援助、助け egeō,-ēre <奪格>を必要とする)
    alterは主格で文の主語、alterīusは属格でauxiliōにかかります。

    Alterum iter erat per prōvinciam nostram.
    「アルテルム・イテル・エラト・ペル・プローウィンキア・ノストラム」と読みます。
    alterumは「第2の」を意味する代名詞的形容詞alter,-era,-erumの中性・単数・主格です。iterにかかります。
    iterは「道」を意味する第3変化中性名詞、単数・主格です。
    eratは「~である」を意味する不規則動詞sumの直説法・能動態・未完了過去、3人称単数です。
    perは「~を通じて」を意味する対格支配の前置詞です。
    prōvinciamは「属州」を意味する第1変化名詞prōvincia,ae f.の単数・対格です。
    nostramは「我々の」を意味する1人称複数の所有形容詞noster,-tra,-trum の女性・単数・対格です。
    「第2の道は我々の属州を通るものであった」と訳せます。
    カエサルの『ガリア戦記』に見られる表現です(Caes.B.G.1.6)。

    カエサル『ガリア戦記』第Ⅰ巻をラテン語で読む
    山下 太郎

    In alterā parte flūminis lēgātum relinquit.
    「イン・アルテラー・パルテ・フルーミニス・レーガートゥム・レリンクゥィト」と読みます。
    alterāは「(2つのうち)一方の」を意味する代名詞的形容詞alter,-era,-erumの女性・単数・奪格です。
    parteは「部分、側」を意味する第3変化名詞parsの単数・奪格です。
    flūminisは「川」を意味する第3変化名詞flūmen,-minis n.の単数・属格です。parteにかかります。
    lēgātumは「使者」を意味する第2変化名詞lēgatus,-ī m.の単数・対格です。
    relinquitは「残す」を意味する第3変化動詞relinquō,-ere の直説法・能動態・現在、3人称単数です。
    「彼は川の一方の側に使者を残しておく」と訳せます。
    カエサルの『ガリア戦記』に見られる表現です(Caes.B.G.2.5)。

    Quanta in alterō dīritās, in alterō cōmitās! (Cic.Sen.65)

    Quanta: 疑問形容詞quantus,-a,-um(どれだけ大きい)の女性・単数・主格。ここでは感嘆文を作る。
    in: <奪格>における
    alterō: 代名詞的形容詞alter,-era,-erum(二人<二つ>のうちの一方の)の男性・単数・奪格。
    dīritās: dīritās,-ātis f.(恐ろしいこと、残酷さ)の単数・主格。「堅苦しさ」(中務訳)。
    in: <奪格>における
    alterō:  代名詞的形容詞alter,-era,-erum(二人<二つ>のうちの一方の)の男性・単数・奪格。
    cōmitās: cōmitās,-ātis f.(愛想のよさ、親切)の単数・主格。「人当たりの良さ」(中務訳)。

    <逐語訳>
    二人のうちの一方(alterō)における(in)残酷さは(dīritās)なんと大きいか(Quanta <est>)。二人のうちのもう片方(alterō)における(in)愛想のよさは(cōmitās)なんと大きいか(<Quanta est>)。

    neuter,-tra,-trum

    Dēbēmus neutrum eōrum contrā alium juvāre.
    「デーベームス・ネウトルム・エオールム・コントラー・アリウム・ユウァーレ」と読みます。
    dēbēmusは「~しなければならない」を意味する第2変化動詞dēbeō,-ēre の直説法・能動態・現在、1人称複数です。
    neutrumは「(2人、2つの)どちらも~ない」を意味する代名詞的形容詞neuter,-tra,-trum の男性・単数・対格です。
    eōrumは「それ」を意味する指示代名詞is,ea,id の男性・複数・属格です。この文では3人称複数の人称代名詞の代わりに用いられています。
    contrā は「~に背いて」を意味する対格支配の前置詞です。
    aliumは「他の、別の」を意味する代名詞的形容詞alius,-a,-udの男性・単数・対格です。
    juvāreは「助ける、援助する」を意味する第1変化動詞juvō,-āre の不定法・能動態・現在です。
    「我々は彼ら(2人)のどちらをも、他方に背く形で援助すべきではない」と訳せます。
    カエサルの『ガリア戦記』に見られる表現です(Caes.B.C.1.35.5)

    Ita fīet ut neutra lingua alterī officiat.
    「イタ・フィーエト・ネウトラ・リングア・アルテリー・オッフィキアト」と読みます。
    itaは「そのように」を意味する副詞です。この文ではut以下の内容を指します。「ut以下のように」と理解できます。
    fīetは「なる、生じる」を意味する不規則動詞fīō,fierī の直説法・能動態・未来、3人称単数です。
    utは「結果・傾向文」を導くutです。「~のように」と訳せます。
    neutraは「どちらも~ない」を意味する代名詞的形容詞neuter,-tra,-trumの女性・単数・主格です。linguaにかかります。
    linguaは「言語」を意味する第1変化名詞lingua,-ae f.の単数・主格です。
    alterīは「他の」を意味する代名詞的形容詞alter,-tra,-trumの女性・単数・与格です。
    officiatは「<与格>の邪魔になる」を意味する第3変化B動詞officiō,-cere の接続法・能動態・現在、3人称単数です。
    「どちらの言語ももう片方の邪魔にならないようになるだろう」と訳せます。
    クィンティリアーヌスの言葉です(Quint.1.1.14)。

    Quotiens tandem ēdixi tibi, ut cavērēs, neuter ad mē īrētis cum querimōniā?
    「クゥォティエンス・タンデム・エーディクシー・ティビ・ウト・カウェーレース・ネウテル・アド・メー・イーレーティス・クム・クゥェリモーニアー」と読みます。
    quotiensは「何度」を意味する疑問副詞です。
    tandemは「一体全体」を意味する副詞です。
    ēdixiは「言う」を意味する第3変化動詞ēdīcō,ere の直説法・能動態・完了、1人称単数です。
    tibiは2人称単数の人称代名詞tū の与格です。
    utは「~することを」を意味する名詞節を導きます(接続法が使われます)。
    cavērēsは「注意する」を意味する第2変化動詞caveō,-ēre の接続法・能動態・未完了過去、2人称単数です。
    neuterは「どちらも~ない」を意味する代名詞的形容詞neuter,-tra,-trumの男性・単数・主格です。
    adは「<対格>に」を意味する前置詞です。
    mē は1人称単数の人称代名詞ego の対格です。
    īrētisは「行く、来る」を意味する不規則動詞eō の接続法・能動態・未完了過去、2人称複数です。
    cumは「<奪格>とともに」を意味する前置詞です。
    querimoniā は「不平」を意味する第1変化名詞querimonia,-ae f.の単数・奪格です。
    「私はいったい何度おまえに注意せよと言ったことか、(夫婦2人の)どちらも不平を持って私のところに来ないようにと」と訳せます。
    プラウトゥスの『メナエクムス兄弟』に見られる表現です(Pl.Men.784-785)。

    Neutrī transeundī initium faciunt.
    「ネウトリー・トランセウンディー・イニティウム・ファキウント」と読みます。
    neutrī は「どちらも~ない」を意味する代名詞的形容詞の問題ですneuter,-tra,-trum の男性・複数・主格です。
    transeundī は「渡る」を意味する不規則動詞(合成動詞)transeō(trans+eō)の動名詞transeundum の属格です。
    initium は「開始」を意味する第2変化名詞initium,-ī n.の単数・対格です。
    faciunt は「行う」を意味する第3変化B動詞faciō,-ere の直説法・能動態・現在、3人称複数です。
    「(両軍の)双方が(沼を)渡ることの開始を行わない(渡り始めない)」と訳せます。
    カエサルの『ガリア戦記』に見られる表現です(Caes.B.G.2.9)。

    In eō neutrōrum contemnenda est sententia.
    「イン・エオー・ネウトロールム・コンテムネンダ・エスト・センテンティア」と読みます。
    eō は「それ」を意味する指示代名詞is,ea,idの中性・単数・奪格です。Inとあわせ「その点で」と訳します。
    neutrōrumは「どちらも~ない」を意味する代名詞的形容詞neuter,-tra,-trumの複数・属格です。
    contemnendaは「軽視する」を意味する第3変化動詞contemnō,-ere の動形容詞contemnendus,-a,-umの女性・単数・主格です。次のestと合わせ、「動形容詞の述語的用法」を作ります。
    sententiaは「意見」を意味する第1変化名詞、単数・主格です。
    「その点で双方の意見はどちらも軽視されるべきではない」と訳せます。
    キケローの『義務について』に見られる表現です(Cic.Off.1.70)。

    nullus,-a,-um

    Amīcus omnium amīcus nullōrum. 万人の友は誰の友でもない。

    Ignōtī nulla cupīdō. Ov.A.A.3.397
    知らないものにはいかなる欲望も(生じ)ない。
    (ignōtus,-a,-um 知られない nullus,-a,-um いかなる~もない cupīdō,-inis f. 欲望)

    nullaは形容詞としてcupīdōを修飾します。ignōtīは完了分詞の名詞的用法(単数・属格)で、直訳は「知られていないもの(に対する)」です。主語cupīdōにかかります。動詞estが省略されています。

    Saepe pater dixit “studium quid inutile temptas? Maeonides nullas ipse reliquit opes”.
    「サエペ・パテル・ディークシト・ストゥディウム・クゥィド・イヌーティレ・テンプタース・マエオニデース・ヌッラース・イプセ・レリークゥィト・オペース」と読みます。
    saepeは「しばしば」を意味する副詞です。
    paterは「父」を意味する第3変化名詞、単数・主格です。
    dixitは「言う」を意味する第3変化動詞dicoの直説法・能動態・完了、3人称単数です。
    studiumは「学問」を意味する第2変化名詞、単数・対格です。
    quidは「なぜ」を意味する疑問副詞です。
    inutileは「無益な」を意味する第3変化形容詞inutilis,-eの中性・単数・対格です。
    temptasは「試みる、志す」を意味する第1変化動詞temptoの直説法・能動態・現在、2人称単数です。
    Maeonidesは「マエオニア人」を意味するギリシャ語系の名詞ですが、ホメーロスの呼称でもあります。
    nullasは「誰も(何も)~ない」を意味する代名詞的形容詞nullus,-a,-umの女性・複数・対格です。opesにかかります。
    ipseは「~自身」を意味する強意代名詞ipse,ipsa,ipsumの男性・単数・主格です。
    reliquitは「残す」を意味する第3変化動詞relinquoの直説法・能動態・完了、3人称単数です。
    opesは「財産」を意味する第3変化名詞ops,opisの複数・対格です。
    「父はしばしば言った、『なぜおまえは役に立たない学問を志すのか。ホメーロス自身何の財産も残さなかったのに』と」と訳せます。
    オウィディウスの『悲しみの歌』に見られる表現です(Ov.Tr.4.10.21-22)。

    solus,-a,-um

    Tu mihi sola places.
    「トゥー・ミヒ・ソーラ・プラケース」と読みます。
    tuは2人称の人称代名詞、単数・主格です。
    mihiは1人称の人称代名詞、単数・与格です。
    solaは「1人の、単独の」を意味する代名詞的形容詞solus,-a,-umの女性・単数・主格です。主語tuと性・数・格が一致します。
    placesは「<与格>を喜ばせる、<与格>のお気に入りである」を意味する第2変化動詞placeoの直説法・能動態・現在、2人称単数です。
    「おまえだけが私を喜ばせる」と訳せます。
    ローマの恋愛詩人プロペルティウスの表現です(Prop.2.7.19)。

    Solus mearum miseriarum est remedium. 
    「ソールス・メアールム・ミセリアールム・エスト・レメディウム」と読みます。
    solusは「1人の」を意味する代名詞的形容詞、男性・単数・主格です。
    mearumは「私の」を意味する所有形容詞meus,-a,-umの女性・複数・属格です。
    miseriarumは「苦悩」を意味する第1変化名詞miseriaの複数・属格です。
    remediumは「救済」を意味する第2変化名詞、単数・主格です。
    「彼1人が私の苦悩の救済である」と訳せます。
    テレンティウスの『兄弟』に見られる表現です(Ad.294)。

    Mihi jus concurrere soli.
    「ミヒ・ユース・コンクッレレ・ソーリー」と読みます。
    mihiは1人称の人称代名詞、単数・与格です。
    jusは不定法を伴い「<不定法>は正しい」という構文を作ります。
    concurrereは「戦う」を意味する第3変化動詞concurroの不定法・能動態・現在です。
    soliは「1人の」を意味する代名詞的形容詞solus,-a,-umの男性・単数・与格です。mihiにかかります。
    「私1人にとって戦うことは正しい(私1人で戦うのが正しい)」と訳せます。
    ウェルギリウスの『アエネーイス』に見られる表現です(Verg.Aen.12.315)。

    Nec soli poenas dant sanguine Teucri.
    「ネク・ソーリー・ポエナース・ダント・サンギネ」と読みます。
    necは「~ではない」を意味する副詞です。
    soliは「1人の」を意味する代名詞的形容詞solus,-a,-umの男性・複数・主格です。Teucriにかかります。
    poenasは「罪」を意味する第1変化名詞poenaの複数・対格です。
    dantは「与える」を意味する不規則動詞doの直説法・能動態・現在、3人称複数です。
    poenas dare は熟語で「罪を償う、罰を受ける」を意味します。
    sanguineは「血」を意味する第3変化名詞sanguisの単数・奪格です。
    「血によって罪を償うのはテウクリー人だけではない」と訳せます。
    ウェルギリウスの『アエネーイス』に見られる表現です(Verg.Aen.2.366)。

    Heu me miseram! Habeo neminem, solae sumus.
    「ヘウ・メー・ミセラム。ハベオー・ネーミネム・ソーラエ・スムス」と読みます。
    heuは「ああ」を意味する感嘆詞です。
    meは1人称の人称代名詞、単数・対格です。この文では「感嘆の対格」として用いられています。
    miseramは「惨めな」を意味する第1・第2変化形容詞miser,-era,-erumの女性・単数・対格です。
    habeoは「持つ」を意味する第2変化動詞habeoの直説法・能動態・現在、1人称単数です。
    neminemは「誰も~ない」を意味する第3変化名詞nemoの単数・対格です。
    solaeは「単独の」を意味する代名詞的形容詞solus,-a,-umの女性・複数・主格です。
    sumusは「~がいる」を意味する不規則動詞sumの直説法・能動態・現在、1人称複数です。
    「ああ、何て惨めな私でしょう。私は誰も持っていない(誰も側にいないわ)。いるのは私たち2人(女性)だけよ」と訳せます。
    テレンティウスの『兄弟』に見られる表現です(Ter.Ad.291-292)。

    Tu servare potes, tu perdere solus amantem: elige, utrum facias.
    「トゥー・セルウァーレ・ポテス・トゥー・ペルデレ・ソールス・アマンテム・エーリゲ・ウトルム・ファキアース」と読みます。
    servareは「救う」を意味する第1変化動詞servoの不定法・能動態・現在です。
    potesは「<不定法>ができる」を意味する不規則動詞possumの直説法・能動態・現在、2人称単数です。
    perdereは「滅ぼす」を意味する第3変化動詞perdoの不定法・能動態・現在です。
    solusは「1人の」を意味する代名詞的形容詞solus,-a,-umの男性・単数・主格です。
    amantemは「愛する」を意味する第1変化動詞amoの現在分詞、女性・単数・対格です。この文の1人称単数egoは女性と判断できます。amantemは「愛する私を」と訳します。
    eligeは「選ぶ」を意味する第3変化動詞eligoの命令法・能動態・現在、2人称単数です。
    utrumは「2人、2つのうちどちらか」を意味する代名詞的形容詞uter,utra,utrumの中性・単数・対格です。
    faciasは「行う」を意味する第3変化B動詞facioの接続法・能動態・現在、2人称単数です。
    「あなただけ(男性)が、愛する私を救うことも、滅ぼすこともできるのです。(2つのうち)どちらを行うのか、選んで下さい」と訳せます。
    オウィディウスの『変身物語』に見られる表現です(Ov.Met.9.547-548)。

    totus,-a,-um

    Ego hoc te toto non vidi die.
    「エゴ・ホーク・テー・トートー・ノーン・ウィーディー・ディエー」と読みます。
    egoは1人称の人称代名詞、単数・主格です。
    hocは「この」を意味する指示形容詞hic,haec,hocの男性・単数・奪格です。dieにかかります。
    teは2人称の人称代名詞、単数・対格です。
    totoは「全体の」を意味する代名詞的形容詞totus,-a,-umの男性・単数・奪格です。dieにかかります。
    vidiは「見る」を意味する第2変化動詞videoの直説法・能動態・完了、1人称単数です。
    dieは「日」を意味する第5変化名詞diesの単数・奪格です。
    「私は(今会うまで)今日1日あなたを見なかった」と訳せます。
    テレンティウスの『兄弟』に見られる表現です(Ter.Ad.527)。

    Telamo uno versu totum locum conficit.
    「テラモー・ウーノー・ウェルスー・トートゥム・ロクム・コンフィキト」と読みます。
    Telamoは「テラモーン」(人名)を意味する第3変化名詞、単数・主格です。
    unoは「一つの」を意味する代名詞的形容詞unus,-a,-umの男性・単数・奪格です。
    versuは「詩句」を意味する第4変化名詞versus の単数・奪格です(「手段の奪格」)。
    totumは「全体の」を意味する代名詞的形容詞totus,-a,-umの男性・単数・対格です。
    locumは「主題」を意味する第2変化名詞locusの単数・対格です。
    conficitは「要約する」を意味する第3変化B動詞conficioの直説法・能動態・現在、3人称単数です。
    「テラモーンは、(議論の)主題全体を1行の詩句で要約している」と訳せます。
    キケローの『神々の本性について』に見られる表現です(Cic.N.D.3.79)。

    Cynicorum ratio tota est eicienda.
    「キュニコールム・ラティオー・トータ・エスト・エーイキエンダ」と読みます。
    Cynicorumは「犬儒学派の哲学者」を意味するCynicusの複数・属格です。
    ratioは「学説」を意味する第3変化名詞、単数・主格です。
    totaは「全体の」を意味する代名詞的形容詞totus,-a,-umの女性・単数・主格です。
    eiciendaは「退ける」を意味する第3変化B動詞eicioの動形容詞eiciendus,-a,-umの女性・単数・主格です。estと合わせ、動形容詞の述語的表現を作ります。
    「犬儒学派の哲学者たちの学説は、その全部が退けられるべきである」と訳せます。
    キケローの『義務について』に見られる表現です(Cic.Off.1.148)。

    ullus,-a,-um

    Nōn fert ullum ictum inlaesa fēlīcitās. Sen.Prov.2.6
    損なわれたことのない幸福はいかなる打撃にも耐えられない。
    (fert<ferō 耐える [不規則動詞] ictus,-ūs m. 打撃 inlaesus,-a,-um 損なわれていない fēlīcitās,-ātis f. 幸福)

    ullusは否定文で英語のanyのように用いられます。この例文でullumはictumを修飾しています。

    Solis candor illustrior est quam ullius ignis.
    「ソーリス・カンドル・イッルストリオル・エスト・クゥァム・ウッリーウス・イグニス」と読みます。
    solisは「太陽」を意味する第3変化名詞solの単数・属格です。
    candorは「輝き」を意味する第3変化名詞、単数・主格です。
    illustriorは「眩しい」を意味する第3変化形容詞illustris,-eの比較級、男性・単数・主格です。
    quamは「~よりも」を意味する副詞です。
    ulliusは「いかなる」を意味する代名詞的形容詞ullus,-a,-umの男性・単数・属格です。
    ignisは「火」を意味する第3変化名詞ignisの単数・属格
    「太陽の輝きは、いかなる火の輝きよりも眩しい」と訳せます。
    キケローの『神々の本性について』に見られる表現です(Cic.N.D.2.40)。

    Hic fessas non vincula navis ulla tenent.
    「ヒーク・フェッサース・ノーン・ウィンクラ・ナーウィース・ウッラ・テネント」と読みます。
    hicは「ここでは」を意味する副詞です。
    fessasは「疲れた」を意味する第1・第2変化形容詞fessus,-a,-umの女性・複数・対格です。
    vinculaは「綱」を意味する第2変化名詞vinculumの複数・主格です。
    navisは「船」を意味する第3変化名詞navisの複数・対格です。
    ullaは「いかなる」を意味する代名詞的形容詞ullus,-a,-umの中性・複数・主格です。vinculaにかかります。
    tenentは「つなぎ止める」を意味する第2変化動詞teneoの直説法・能動態・現在、3人称複数です。
    「ここでは疲れた船をいかなる綱もつなぎ止めることはない」と訳せます。
    ウェルギリウスの『アエネーイス』に見られる表現です(Verg.Aen.1.168-169)。

    Dicunt sibi esse in animo sine ullo maleficio iter per provinciam facere.
    「ディークント・シビ・エッセ・イン・アニモー・シネ・ウッロー・マレフィキオー・インテル・ペル・プローウィンキアム・ファケレ」と読みます。
    dicuntは「言う」を意味する第3変化動詞dicoの直説法・能動態・現在、3人称複数です。esseを含む不定法句を目的語に取ります。
    sibiは3人称の再帰代名詞の与格です。「自分たちにとって」を意味します。この文ではanimoにかけ、「自分たちの心」と訳します。
    esseは不規則動詞sum(~がある)の不定法・能動態・現在です。
    animoは「心」を意味する第2変化名詞animusの単数・奪格です。
    sineは「<奪格>なしに」を意味する前置詞です。
    ulloは「いかなる」を意味する代名詞的形容詞ullus,-a,-umの中性・単数・奪格です。
    maleficioは「迷惑」を意味する第2変化の中性名詞maleficiumの単数・奪格です。
    iterは「道」を意味する第3変化名詞iterの単数・対格です。facereの目的語です。
    perは「<対格>を通じて」を意味する前置詞です。
    provinciamは「属州」を意味する第1変化名詞provinciaの単数・対格です。
    facereは「作る」を意味する第3変化B動詞facioの直説法・能動態・現在、3人称複数です。
    iter facereは熟語で「旅をする、移動する」を意味します。
    「彼らは言う、自分たちの心の内にあるのは、いかなる迷惑もかけずに属州を通過することだと」と訳せます。
    カエサルの『ガリア戦記』に見られる表現です(Caes.B.G.1.7)。

    unus,-a,-um

    Flōs ūnus nōn facit hortum. 一輪の花が庭を作るのではない。
    (flōs,-ōris m. 花 faciō,-ere 作る hortus,-ī m. 庭)

    ūnusは主語のflōsを修飾しています(ともに男性・単数・主格)。

    Ūnus prō omnibus, omnēs prō ūnō.
    一人はみんなのために、みんなは一人のために。

    Unius ob iram Italis longe disjungimur oris.
    「ウーニーウス・オブ・イーラム・イタリース・ロンゲー・ディスユンギムル・オーリース」と読みます。
    uniusは「一人の、一つの」を意味する代名詞的形容詞unus,-a,-umの女性・単数・属格です。原文ではユッピテルの妻ユーノーを指すため、女性とわかります。
    obは「<対格>のために」を意味する前置詞です。
    iramは「怒り」を意味する第1変化名詞iraの単数・対格です。
    Italisは「イタリアの」を意味する第1・第2変化形容詞Italus,-a,-umの女性・複数・奪格です。
    longeは「遠く」を意味する副詞です。
    disjungimurは「<奪格>から隔てる」を意味する第3変化動詞disjungoの直説法・受動態・現在、1人称複数です。
    orisは「岸辺」を意味する第1変化名詞oraの複数・奪格です。
    「1人(女性)の怒りのために我々はイタリアの岸辺から遠く隔てられている」と訳せます。
    ウェルギリウスの『アエネーイス』に見られる表現です(Verg.Aen.1.251-252)。

    Hunc unum plurimae consentiunt gentes populi primarium fuisse virum.
    「フンク・ウーヌム・プルーリマエ・コンセンティウント・ゲンテース・ポプリー・プリーマーリウム・フイッセ・ウィルム」と読みます。
    huncは「この」を意味する指示形容詞hic,haec,hocの男性・単数・対格です。
    unumは「一人の、一つの」を意味する代名詞的形容詞unus,-a,-umの男性・単数・対格です。fuisseの作る不定法句の意味上の主語になります。
    plurimaeは「非常に多くの」を意味する第1・第2変化形容詞plurimus,-a,-um の女性・複数・主格です。
    consentiuntは「同意する」を意味する第4変化動詞consentioの直説法・能動態・現在、3人称複数です。
    gentesは「氏族、国」を意味する第3変化名詞gensの複数・主格です。
    populiは「国民」を意味する第2変化名詞populusの単数・属格です。
    primariumは「第1の」を意味する第1・第2変化形容詞primarius,-a,-umの男性・単数・対格です。
    fuisseは「~である」を意味する不規則動詞sumの不定法・能動態・完了です。
    virumは「勇士」を意味する第2変化名詞virの単数・対格です。
    「この者1人が(ローマ)国民第1の勇士であったときわめて多くの国が同意する」と訳せます。
    キケローの『老年について』に見られる表現です(Cic.Sen.61)。

    In te unum atque in tuum nomen se tota convertet civitas.
    「イン・テー・ウーヌム・アトクゥェ・イン・トゥウム・ノーメン・セー・トータ・コンウェルテト・キーウィタース」と読みます。
    inは「<対格>に」を意味する前置詞です。
    teは2人称の人称代名詞、単数・対格です。
    unumは「一人の、一つの」を意味する代名詞的形容詞unus,-a,-umの男性・単数・対格です。
    tuumは2人称単数の所有形容詞tuus,-a,-umの中性・単数・対格です。
    nomenは「名前」を意味する第3変化中性名詞nomenの単数・対格です。
    seは3人称の再帰代名詞、単数・対格です。
    totaは「全体の」を意味する代名詞的形容詞totus,-a,-umの女性・単数・主格です。
    convertetは「~に向かう」を意味する第3変化動詞convertoの直説法・能動態・未来、3人称単数です。
    civitasは「国」を意味する第3変化名詞、単数・主格です。
    「国全体はおまえ1人の方に、おまえの名前の方に向かうだろう」と訳せます。
    キケローの『国家について』に見られる言葉です(Cic.Rep.6.12)。

    uter,-tra,-trum

    Uter ex his tibi sapiens videtur?
    「ウテル・エクス・ヒース・ティビ・サピエンス・ウィデートゥル」と読みます。
    uetrは「2人、2つのどちらが」を意味する代名詞的形容詞uter,-tra,-trumの男性・単数・主格です。
    exは「<奪格>のうち」を意味する前置詞です。
    hisは「これ」を意味する指示代名詞hicの男性・複数・奪格です。
    tibiは2人称の人称代名詞、単数・与格です。
    sapiensは「賢者」を意味する第3変化名詞、単数・主格です。
    videturは「見る」を意味する第2変化動詞videoの直説法・受動態・現在、3人称単数です。
    「これら(2人)のどちらが君には賢者に見られる(見える)のか」と訳せます。
    セネカの『倫理書簡集』に見られる表現です(Sen.Ep.90.14)。

    Uter est insanior horum?
    uetrは「2人、2つのどちらが」を意味する代名詞的形容詞uter,-tra,-trumの男性・単数・主格です。
    insaniorは「狂っている」を意味する第1・第2変化形容詞insanusの比較級、男性・単数・主格です。
    horumは「これ」を意味する指示代名詞hicの男性・複数・属格です。
    「これら(2人)のどちらがより狂っているか」と訳せます。
    ホラーティウスの『風刺詩』に見られる表現です(Hor.Sat.2.3.102)。

    Utrum igitur mavis?
    「ウトルム・イギトゥル・マーウィース」と読みます。
    utrumは「2人、2つのどちらが」を意味する代名詞的形容詞uter,-tra,-trumの中性・単数・対格です。
    igiturは「それではを意味する接続詞です。
    mavisは「むしろ選ぶ」を意味する不規則動詞maloの直説法・能動態・現在、2人称単数です。
    「それでは、あなたは(2つの)どちらを選ぶか」と訳せます。
    キケローの『トゥスクルム荘対談集』に見られる表現です(Cic.Tusc.4.4.9)。

    Harum duarum condicionum nunc utram malis vide.
    「ハールム・ドゥアールム・コンディキオーヌム・ヌンク・ウトラム・マーリース・ウィデー」と読みます。
    harumは「これ」を意味する指示形容詞hicの女性・複数・属格です。condicionumにかかります。
    duarumは「2つ」を意味する数詞duo,duae,duoの複数・属格です。
    condicionumは「条件」を意味する第3変化女性名詞condiciioの複数・属格です。
    nuncは「今」を意味する副詞です。
    utramは「2人、2つのどちら」を意味する代名詞的形容詞uter,-tra,-trumの女性・単数・対格です。condicionemが省かれています。
    malisは「むしろ選ぶ」を意味する不規則動詞maloの接続法・能動態・現在、2人称単数です(間接疑問文中の接続法です)。
    videは「見る」を意味する第2変化動詞videoの命令法・能動態・現在、2人称単数です。「見よ、考えよ」を意味します。
    「これら2つの条件のうち、あなたは今どちらを選ぶのか、考えてみよ」と訳せます。
    テレンティウスの『自虐者』に見られる表現です(Ter.Heaut.326)。

    Utrius horum verba probes et facta, doce.
    「ウトリーウス・ホールム・ウェルバ・プロベース・エト・ファクタ・ドケー」と読みます。
    utriusは「2人の、2つのどちら」を意味する代名詞的形容詞uter,-tra,-trumの男性・単数・属格です。verbaにかかります。
    horumは「これ」を意味する指示代名詞hicの男性・複数・属格です。この文では名詞として使われています。「これらの人々のうち」を意味します。
    probesは「是認する」を意味する第1変化動詞proboの接続法・能動態・現在、2人称単数です(間接疑問文中の接続法です)。
    factaは「行動」を意味する第2変化名詞factumの複数・対格です。
    doceは「教える」を意味する第2変化動詞doceoの命令法・能動態・現在、2人称単数です。
    「これら(2人)のどちらの言葉と行動をあなたは是認するか、教えてくれ」と訳せます。
    ホラーティウスの『書簡詩』に見られる表現です(Ep.1.17.15)。

    Horum utro uti nolumus.
    「ホールム・ウトロー・ウーティー・ノールムス」と読みます。
    horumは「これ」を意味する指示代名詞hicの中性・複数・属格です。
    utroは「2人、2つのどちら」を意味する代名詞的形容詞uter,-tra,-trumの中性・単数・奪格です。
    utiは「<奪格>を用いる」を意味する形式受動態動詞utorの不定法・受動態・現在です。
    nolumusは「<不定法>を望まない」を意味する不規則動詞noloの直説法・能動態・現在、1人称複数です。
    「これら(2つ)のどちらを用いることも我々は欲しない」と訳せます。
    キケローの『セスティウス弁護』に見られる表現です(Cic.Sest.92)。

    nonnullus,-a,-um

    Frumenti copiam legionarii nonnullam habebant.
    「フルーメンティー・コーピアム・レギオーナーリイー・ノーンヌッラム・ハベーバント」と読みます。
    frumentiは「穀物」を意味する第2変化名詞frumentumの単数・属格です。
    copiamは「蓄え」を意味する第1変化名詞copiaの単数・対格です。
    legionariiは「軍団兵」を意味する第2変化名詞legionariusの複数・主格です。
    nonnullamは「いく人かの、いくつかの」を意味する代名詞的形容詞nonnullus,-a,-umの女性・単数・対格です。copiamにかかります。
    habebantは「持つ」を意味する第2変化動詞habeoの直説法・能動態・未完了過去、3人称複数です。
    「軍団兵はいくらかの穀物の蓄えを持っていた」と訳せます。
    カエサルの『ガリア戦記』に見られる表現です(Caes.B.C.1.78)。

    Nonnullae insulae propter acerbitatem imperii defecerant.
    「ノーンヌッラエ・インスラエ・プロプテル・アケルビターテム・インペリイー・デーフェーケラント」と読みます。
    nonnullaeは「いく人かの、いくつかの」を意味する代名詞的形容詞nonnullus,-a,-umの女性・複数・主格です。
    insulaeは「島」を意味する第1変化名詞insulaの複数・主格です。
    propterは「<対格>ゆえに」を意味する前置詞です。
    acerbitatemは「苛酷さ」を意味する第3変化名詞acerbitasの単数・対格です。
    imperiiは「支配」を意味する第2変化名詞imperiumの単数・属格です。
    defecerantは「離反する」を意味する第3変化B動詞deficioの直説法・能動態・過去完了、3人称複数です。
    「いくつかの島々は支配の苛酷さゆえに離反していた」と訳せます。
    ネポースの『英雄伝』(キモーン)に見られる表現です(Nep.Cim.2)。

    Nonnulli sine parentium disciplina rectam vitae secuti sunt viam.
    「ノーンヌッリー・シネ・パレンティウム・ディスキプリーナー・レクタム・ウィータエ・セクーティー・スント・ウィアム」と読みます。
    nonnulliは「いく人かの、いくつかの」を意味する代名詞的形容詞nonnullus,-a,-umの男性・複数・主格です。
    sineは「<奪格>なしに」を意味する前置詞です。
    parentiumは「親」を意味する第3変化名詞parensの複数・属格です。
    disciplinaは「しつけ」を意味する第1変化名詞disciplinaの単数・奪格です。
    rectamは「正しい」を意味する第1・第2変化形容詞rectus,-a,-umの女性・単数・対格です。viamにかかります。
    vitaeは「人生」を意味する第1変化名詞vitaの単数・属格です。
    secutiは「進む」を意味する形式受動態動詞sequorの完了分詞、男性・複数・主格です。次のsuntとあわせ、直説法・受動態・完了を作ります。
    viamは「道」を意味する第1変化名詞viaの単数・対格です。
    「幾人かの者たちは親のしつけなしに正しい人生の道を進んだ」と訳せます。
    キケローの『義務について』に見られる表現です(Cic.Off.1.118)。

    Miltiades plerasque insulas ad officium redire coegit, nonnullas vi expugnavit.
    「ミルティアデース・プレーラースクゥェ・インスラース・アド・オッフィキウム・レディーレ・コエーギト・ノーンヌッラース・ウィー・エクスプグナーウィト」と読みます。
    plerasqueは「大部分の」を意味する第1・第2変化形容詞plerusque,pleraque,plerumqueの女性・複数・対格です(-queを除いた部分が第1・第2変化形容詞の変化をします)。
    insulasは「島」を意味する第1変化名詞insulaの複数・対格です。
    adは「<対格>に」を意味する前置詞です。
    officiumは「務め」を意味する第2変化名詞officiumの単数・対格です。
    redireは「戻る」を意味する不規則動詞(合成動詞)redeoの不定法・能動態・現在です。
    coegitは「<不定法>を強いる」を意味する第3変化動詞cogoの直説法・能動態・完了、3人称単数です。
    nonnullasは「いく人かの、いくつかの」を意味する代名詞的形容詞nonnullus,-a,-umの女性・複数・対格です。insulasが省略されています。
    viは「力、武力」を意味する第3変化名詞visの単数・奪格です(手段の奪格)。
    expugnavitは「征服する」を意味する第1変化動詞expugnoの直説法・能動態・完了、3人称単数です。
    「ミルティアデースは、大部分の島々には務めに戻るよう強いたが、いくつか(の島々)は武力で征服した」と訳せます。
    ネポースの『英雄伝』(ミルティアーデース)に見られる表現です(Nep.Mil.7)。

    Sed tanta fuit nonnullorum virtutis obtrectatio.
    「セド・タンタ・フイト・ノーンヌッロールム・ウィルトゥーティス・オプトレクターティオー」と読みます。
    sedは「だが、しかし」を意味する接続詞です。
    tantaは「とても大きな」を意味する第1・第2変化形容詞tantus,-a,-umの女性・単数・主格です。
    fuitは「~である」を意味する不規則動詞sumの直説法・能動態・完了、3人称単数です。
    nonnullorumは「いく人かの、いくつかの」を意味する代名詞的形容詞nonnullus,-a,-umの男性・複数・属格です。
    virtutisは「美徳」を意味する第3変化名詞virtusの単数・属格です。「目的語的属格」として用いられ、「美徳に対する」と訳します。
    obtrectatioiは「中傷」を意味する第3変化女性名詞、単数・主格です。
    「だが、幾人かの人々の(による)美徳への中傷はとても大きなものであった」と訳せます。
    ネポースの『英雄伝』(エウメネース)に見られる表現です(Nep.Eum.10)。

    Nonnulli enim laesam ab eo pietatem putabant.
    「ノーンヌッリー・エニム・ラエサム・アブ・エオー・ピエターテム・プターバント」と読みます。
    nonnullorumは「いく人かの、いくつかの」を意味する代名詞的形容詞nonnullus,-a,-umの男性・複数・主格です。
    enimは「実際」を意味する副詞です。
    laesamは「損なう」を意味する第3変化動詞laedoの完了分詞laesus,-a,-umの女性・単数・対格です。
    abは「<奪格>によって」を意味する前置詞です。
    eoは「それ」を意味する指示代名詞isの男性・単数・奪格です。この文では3人称単数の代名詞として使われています。ab eoは「彼によって」と訳します。
    pietatemは「信義」を意味する第3変化名詞pietasの単数・対格です。
    putabantは「考える」を意味する第1変化動詞putoの直説法・能動態・未完了過去、3人称複数です。
    「実際幾人かの者たちは彼によって信義が損なわれたと考えていた」と訳せます。
    ネポースの『英雄伝』(ティーモレオーン)に見られる表現です(Nep.Timo.1)。

    uterque,utraque,utrumque

    ad utrumque cāsum parātus  Verg.Aen.2.61-62
    どちらの状況に対しても覚悟のできた
    (ad <対格>に対して parātus,-a,-um 準備のできた、覚悟のできた cāsus,-ūs m. 状況、立場、条件)

    utrumqueは形容詞としてcāsumにかかっています(男性・単数・対格)。

    Utrumque enim vitium est, et omnibus crēdere et nullī.  Sen.Ep.3.4
    というのも、誰であれ信用することも、誰をも信用しないことも、どちらも間違っているからだ。
    (enim というのは vitium,-iī n. 過ち crēdō,-ere <与格>を信じる)

    utrumqueは「(二つの)両方が」を意味します。ここでは代名詞として使われ、主語の働きをします。動詞estを見るとわかるとおり、utrumqueは単数扱いになります。nullīはnullusの与格で、代名詞として使われています。

    Hi ad utramque ripam fluminis agros, aedificia vicosque habebant.
    「ヒー・アド・ウトラムクゥェ・リーパム・フルーミニス・アグロース・アエディフィキア・ウィーコースクゥェ・ハベーバント」と読みます。
    hiは「これ」を意味する指示代名詞hicの男性・複数・主格です。この文では名詞的に用いられ、「これらの人々は」を意味します。
    adは「<対格>に」を意味する前置詞です。
    utramqueは「2人、2つのうちの両方」を意味する代名詞的形容詞uterque,utraque,utrumqueの女性・単数・対格です。
    ripamは「川岸」を意味する第1変化名詞ripaの複数・対格です。
    fluminisは「川」を意味する第3変化名詞flumenの単数・属格です。
    agrosは「畑」を意味する第2変化名詞agerの複数・対格です。
    aedificiaは「建物」を意味する第2変化名詞aedificiumの複数・対格です。
    vicosは「村落」を意味する第2変化名詞vicusの複数・対格です。
    habebantは「持つ」を意味する第2変化動詞habeoの直説法・能動態・未完了過去、3人称複数です。
    「これらの者たちは川の両岸に畑や建物、村落を持っていた」と訳せます。
    カエサルの『ガリア戦記』に見られる表現です(Caes.B.G.4.4)。

    Proximo die Caesar e castris utrisque copias suas eduxit.
    「プロクシモー・ディエー・カエサル・エー・カストリース・ウトリーウスクゥェ・コーピアース・スアース・エードゥークシト」と読みます。
    proximoは「次の」を意味する第1・第2変化形容詞proximus,-a,-umの男性・単数・奪格です。
    dieは「日」を意味する第5変化名詞diesの単数・奪格です。
    eは「<奪格>から」を意味する前置詞です。
    utrisqueは「2人、2つのうちの両方」を意味する代名詞的形容詞uterque,utraque,utrumqueの中性・複数・奪格です。
    copiasは「軍勢」を意味する第1変化名詞copiaの複数・対格です(この名詞は複数形で「軍勢」を意味します)。
    suasは「自分の」を意味する3人称の所有形容詞suus,-a,-umの女性・複数・対格です。
    eduxitは「連れ出す、出発させる」を意味する第3変化動詞educoの直説法・能動態・完了、3人称単数です。
    「翌日カエサルは、両方の陣営から自軍を出発させた」と訳せます。
    カエサルの『ガリア戦記』に見られる表現です(Caes.B.G.1.50)。

    nemo / nihil

    Nēmō in amōre videt.  恋する者は誰も(ものが)見えない。

    Industriae nihil impossibile.  勤勉にとって不可能なものは何もない。

    Nēmō deō pauper est. 
    「ネーモー・デオー・パウペル・エスト」と読みます。
    nemoは「誰も~ない」を意味する第3変化名詞、単数・主格です。
    deoは「神」を意味する第2変化名詞deusの単数・与格です。
    pauperは「貧しい」を意味する第3変化形容詞pauperの男性・単数・主格です。
    「神にとって貧しい者はいない」と訳せます。

    Graī praeter laudem nullīus avārī erant.
    「グラーイー・プラエテル・ラウデム・ヌッリーウス・アウァーリー・エラント」と読みます。
    Graiは「ギリシャ人」を意味する第2変化の複数名詞Grai,-orumの複数・主格です。
    praeterは「<対格>以外」を意味する前置詞です。
    laudemは「賞賛」を意味する第3変化名詞lausの単数・対格です。
    nulliusはnullus,-a,-um(いかなる~もない) の中性・単数・対格ですが、nihil(無)同形の代用として用いられます。
    avariは「<属格>を求めている」を意味する第1・第2変化形容詞avarus,-a,-umの男性・複数・主格です。
    「ギリシア人は賞賛以外何も求めなかった」と訳せます。
    ホラーティウスの『詩論』に見られる表現です(Hor.A.P.324)。

    Chrysippus ait sapientem nulla re egere.
    「クリューシップス・アーイト・サピエンテム・ヌッラー・レー・エゲーレ」と読みます。
    aitは「言う」を意味する不完全動詞aioの直説法・能動態・現在、3人称単数です。
    sapientemは「賢者」を意味するsapiensの単数・対格です。egereを含む不定法句の意味上の主語です。
    nulla reはnihil(無)の単数・奪格の代用です。
    egereは「<奪格>を欠く」を意味する第2変化動詞egeoの不定法・能動態・現在です。
    「クリューシップスは言う、賢者はいかなるものも欠いていない、と」と訳せます。
    セネカの『倫理書簡集』に見られる表現です(Sen.Ep.9.14)。

    しっかり学ぶ初級ラテン語

    この記事が気に入ったら
    フォローしてね!

    よかったらシェアしてね!
    • URLをコピーしました!
    • URLをコピーしました!

    この記事を書いた人

    ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

    目次