ラテン語入門

不定法

2016年8月8日

不定法

不定法は、現在、未来、完了の三つの時称で現れます。それぞれに能動態と受動態があります。つまり全部で六つの形があります。amōを例に取ると、それぞれ次のような形になります。

(左が能動態、右が受動態)
現在 amāre amārī
完了 amāvisse amātus esse
未来 amātūrus esse amātum īrī

完了の能動態は、完了幹+isse(~したこと)、完了の受動態は、完了分詞+esse(~されたこと)です。未来の能動態は、未来分詞+esse(~するだろうこと)、未来の受動態は、目的分詞(スピーヌム)+īrī(~されるだろうこと)です。

形式受動態動詞の不定法は能動態の形を持ちません(受動態の三つの時称のみ)。opīnor(推測する)を例に取ると、不定法の現在はopīnārī(推測すること)、完了はopīnātus esse(推測したこと)、未来はopīnātūrus esse(推測するだろうこと)となります。未来の形は、受動態のopīnātum īrīの形でなく、能動態になる点が注意すべきポイントです。

時称に関しては、主文の動詞と比べて「同時」なら現在時称、「以前」なら完了時称、「以後」なら未来時称が使われます。

不定法の基本的用法

ラテン語の不定法は、英語のto不定詞と同じく名詞として使われます。文の主語にも補語にも、目的語にもなります。その場合、中性単数の名詞扱いされます。

  • Vidēre est crēdere.
  • 見ることは信じることである。

    不定法vidēreが主語、crēdereが補語になっています。

  • Errāre hūmānum est.
  • 間違うことは人間らしい。

    主語は不定法errāreで、補語は形容詞hūmānumです。これは第一・第二変化形容詞hūmānus,-a,-umの中性・単数・主格です。つまり、不定法は中性単数の名詞扱いすることが確認できます。

不定法・能動態・現在

ラテン語の不定法・能動態・現在はきわめて重要な形を示しています。この形を見れば動詞の活用の型がわかるからです。amō(愛する)を例にとると、その不定法・能動態・現在は amāre(アマーレ)です。この形は辞書を引くと見出しの右横に書いてあります。たとえば、amō,-āreといった具合にです。辞書を引いたとき、必ずこの形に注意する癖をつけてください。

第1変化動詞: amō,-āre
第2変化動詞: videō,-ēre
第3変化動詞: agō,-ere
第3変化B動詞: capiō,-ere
第4変化動詞: auidō,-īre

初心者の人は、ハイフンで示されても困るかもしれません。amō,-āreはハイフンを使わずに書くと、amō,amāreです。同様に、moneō,monēre、agō,agere、audiō,audīreです。

授業等ではいちいち「不定法・能動態・現在」とはいわず、「不定法」とだけいわれることが多いです。不定法の他の形にくらべ、出現頻度が圧倒的に多い形だからです。

不定法・能動態・現在の例文
  • Vīvere est cōgitāre. Cic.Tusc.5.111
  • 生きることは考えることである。

  • Quī potest esse vīta vītālis? Cic.Amic.22
  • どうして人生は生きるに値するものでありえようか。

  • Miserīs succurrere discō. Verg.Aen.1.630
  • 私は惨めな人たちを助けることを学んでいます。

  • Incipere multō est quam impetrāre facilius. Pl.Poen.974
  • 始めることは達成することよりはるかに容易である。

不定法・受動態・現在

不定法の受動態・現在は現在幹に-rīをつけて作ります。ただし、第三変化と第三変化Bは、現在幹から幹末母音eを取り-īをつけます。

第1変化動詞: amārī
第2変化動詞: monērī
第3変化動詞: agī
第3変化B動詞: capī
第4変化動詞: auīrī

不定法・受動態・現在の例文

不定法・能動態・完了

完了の能動態は、完了幹+isseで表します。「~したこと」と訳せます。amōを例に取ると、不定法・能動態・現在amāreは「愛すること」、不定法・能動態・完了のamāvisseは「愛したこと」となります。

第一変化動詞 amō > amāvisse
第二変化動詞 moneō > monuisse
第三変化動詞 agō > ēgisse
第四変化動詞 audiō > audīvisse

不定法・能動態・完了の例文
  1. In magnīs et voluisse sat est.
  2. 偉大なことにおいては志しただけでも十分だ。

  3. Virtūs est vitium fugere et sapientia prīma stultitiā caruisse.
  4. 徳は悪徳をさけること。知恵のはじめは愚をもたぬこと。

  5. Cum rērum nātūrā dēlīberā: illa dicet tibi et diem fēcisse sē et noctem.
  6. 事物の本性と相談せよ。それ(自然)はあなたに言うだろう、自分は昼も夜も作った、と。

voluisseは不規則動詞volōの不定法・能動態・完了で、この文の主語です。magnīs(偉大な、大きい)は中性・複数・奪格で、この文では名詞として使われています。

不定法・受動態・完了

完了分詞+esseで表します。

不定法・能動態・未来

未来分詞はesse(sumの不定法・能動態・現在)とともに、不定法・能動態・未来を作ります。esseが省略されることもあるので、注意が必要です。

不定法・能動態・未来の例文

不定法・受動態・未来

完了分詞、中性・単数・対格形(=スピーヌムと呼ばれる)+īrī で表します。

不定法の用法

主な用法を紹介します。ラテン語では「対格不定法」が頻出します。

対格不定法
  • Intellegō tē sapere.
  • 私は君が賢明であると理解している。

    「AがBであることを理解する(intellegō)」という構文です。この時、主動詞(intellegō)の主語(ego)と、不定法の意味上の主語(上の例ではtē)が異なるため、後者を対格にします。このtēという対格が不定法sapere(賢明であること)の意味上の主語になるわけです。

  • Eās rēs jactārī nōlēbat. Caes.B.G.1.18
  • 彼は、それらの問題が議論されることを望まなかった。
    (eās<is [指示代名詞] rēs,-eī f. 問題 jactō,-āre 議論する nōlō,nolle <不定法>を望まない)
    この例文で不定法は受動態になりますが、構文自体は対格不定法です。つまり、「AがBされることを望まなかった(nōlēbat)」という構文において、A(eās rēs)が対格になり、B(jactārī)が不定法の受動態になります。

    「対格不定法」については、「対格のさまざまな用法」にて詳しく説明しています。

歴史的不定法
    不定法が直説法・能動態・未完了過去、または完了の代わりとして用いられることがあります。

  • Tum Catilīna pollicērī novās tabulās. Sall.Cat.21
  • その時カティリーナは借金の帳消しを約束した。

    pollicērīは形式受動態動詞polliceorの不定法ですが、完了(pollicitus est)の代わりとして使われています。

  • Interim cotīdiē Caesar Haeduōs frūmentum, quod essent pūblicē pollicitī, flāgitāre. Caes.B.G.1.16
  • Interim: その間
    cotīdiē: 毎日
    Caesar: Caesar,-aris m.(カエサル)の単数・主格。
    Haeduōs: Haeduī,-ōrum m.pl.(ハエドゥイー族)の対格。
    frūmentum: frūmentum,-ī n.(穀物)の単数・対格。
    quod: 関係代名詞quī,quae,quodの中性・単数・対格。先行詞はfrūmentum。
    essent: 不規則動詞sum,esseの接続法・未完了過去、3人称複数。pollicitīとともに、形式受動態動詞polliceorの接続法・過去完了、3人称複数を作る。
    pūblicē: 「公に」。essent...pollicitīにかかる。
    pollicitī: 形式受動態動詞polliceor,-ērī(約束する)の完了分詞、男性・複数・主格。
    flāgitāre: flāgitō,-āre(しつこく要求する)の不定法・能動態・現在。「歴史的不定法」。flagitābatの代用。

    <逐語訳>
    その間(Interim)、カエサルは(Caesar)毎日(cotīdiē)ハエドゥイー族に(Haeduōs)彼らが公に(pūblicē)約束していた(essent...pollicitī)ところの(quod)穀物を(frūmentum)しつこく要求した(flāgitāre)。

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