語彙と文法
「フルクトゥアト・ネク・メルギトゥル」と読みます。
fluctuat は「波のように揺れる、波の上で翻弄される」を意味する fluctuō,-āre の直説法・能動態・現在、3人称単数です。主語は明示されていませんが、一般には「船」を意味すると考えられます。
nec は否定を意味します。nec=et nōn と説明されます。「そして~でない」または、「それでも~でない」と文脈で訳し分けます。この文では後者となります。
mergitur は「水の中へ突っ込む、沈める」を意味するmergō,-ere の直説法・受動態・現在、3人称単数です。「沈められる」という意味です。
直訳は、「それ(船)は波の上で揺れる。それでも沈められない」となります。
パリ市のモットーとして知られます。日本語訳は「たゆたえども沈まず」で人口に膾炙しています。動乱を乗り越えて進むパリ市を船に見立てていると言えます。

fluctuōは英単語fluctuate(波動する)の語源ですね。
第1変化動詞fluctuō,-āreの活用(直説法・能動態・現在)は次の通りです。
fluctuō, fluctuās, fluctuat, fluctuāmus, fluctuātis, fluctuant
※この表現については、『ラテン語名句小辞典』(野津寛著)の解説が詳しいです。
コメント
コメント一覧 (4件)
[…] パリ市のモットーではありませんが、私自身、「たゆたえども沈まず」(Fluctuat nec mergitur.)の心意気で進んでまいりたいと思います。 […]
フランス語の辞書で見たことがありますが、どの単語の項目だったか思いだせません。capだったか?
教えてください。
上記のご説明「fluctuō,-ere の直説法」は、下記の通り、修正すべきではないでしょうか。
fluctuō, fluctuāre
先生のおかげでいつも楽しく勉強させていただいております。
BAEK様
ご指摘通りです。ただちに訂正します。引き続きよろしくお願いいたします。