ラテン語入門

命令法

2018年10月26日

命令法・能動態

現在と未来があります。「現在」はその命令が今すぐ実行されると期待される場合に用いられます(第1命令法とも呼ばれます)。「未来」は将来実行されると期待される場合に用いられ、主に法律や布告の文に見られます(第2命令法とも呼ばれます)。

命令法・能動態・現在

2人称と3人称、それぞれ単数と複数があります。一番頻度の高いのは命令法・能動態・現在、2人称単数です。

  • Vīve. 生きよ。(vīve: vīvō の命令法・能動態・現在、2人称単数)
  • Stultitiam incrēdibilem vidēte. Cic.Phil.2.8 (諸君は)信じられない愚かさを見たまえ。
  • stultitiam: stultitia,-ae f.(愚かさ)の単数・対格。
    incrēdibilem: 第3変化形容詞incrēdibilis,-e(信じられない)の女性・単数・対格。stultitiamにかかる。
    vidēte: videō,-ēre(見る)の命令法・能動態・現在、2人称複数。陪審員たちに向けての命令。

    命令法の作り方

    命令法・能動態・現在、2人称単数

    命令法・能動態・現在、2人称単数の作り方は簡単です。動詞の不定法の語尾から-re を取ればこの形が得られます(現在幹と一致)。amō の不定法(能動態)は amāre なので、この語尾から-re を取ると、amāになります。

    同様に、第2変化動詞rīdeō の命令法はrīdē(笑え)、第3変化動詞discō の命令法はdisce(学べ)、第4変化動詞audiō の命令法はaudī(聞いて)になります。動詞の不定法は、活用パターンに応じて-āre、-ēre、-ere、-īreという4つの異なる語尾を持ちますが、そこから-reを取った命令法の語尾も(当然ながら)次のように4種類に分かれます。

    第1変化動詞の命令法の語尾 -ā
    第2変化動詞の命令法の語尾 -ē
    第3変化動詞の命令法の語尾 -e
    第4変化動詞の命令法の語尾 -ī

    <注意>
    動詞の中には現在幹(不定法の語尾から-reを取った形)の母音が落ちるものがあります。

    代表例:

    dīcō,-ere(言う)→dīc(dīceの語尾のeが落ちる)
    dūcō,-ere(導く)→dūc
    faciō,-ere(作る)→fac
    ferō,ferre(運ぶ)→fer

    例文:

    • Dīc mihi, crās istud, Postume, quando venit? Mart.5.58.2 おまえの「明日」は、ポストゥムスよ、いつ訪れるのか、言ってくれ。
    • Perfer, obdūrā. Cat.8.11 耐えよ、持ちこたえよ。
    • PerferはPer+ferと分解できます。不規則動詞ferō,ferre(耐える)に前置詞 perがついた合成動詞です。-ferōの部分が -ferになるのは -fereの語尾のeが落ちるためです。

    sumの命令法・現在

    2人称単数は es、2人諸複数は esteです。

    命令法・能動態・現在、2人称複数

    複数では、現在幹(不定法・能動態・現在の語尾から-reを取った形)に -teをつけます。amō,-āre(愛する)を例にとると、amāteとなります。ただし、第3変化動詞の場合、現在幹の幹末のeをiに変えてから -teをつけます。agō,-ere(行う)を例にとると、agiteになります。

    命令法・能動態・未来、2人称単数、3人称単数

    未来の単数(2人称単数と3人称単数)は同形です。現在幹に-tōをつけます。amōを例にとると、amātōとなります。ただし、第3変化動詞の場合、幹末のeをiに変えます。agōを例にとると、agitōになります。

    sciō,-īre(知る)、meminī,-isse(覚えている)など、命令法・能動態・未来(第2命令法)しかない動詞もあります。それぞれ2人称単数、2人称複数の順に、scītō,scītōte、mementō,mementōteになります。

    例文:Mementō morī.死を忘れるな

    命令法・能動態・未来、2人称複数、3人称複数

    未来の複数形は、2人称の場合、現在幹に-tōteを加えます(ただし、第3変化動詞の場合、幹末のeをiに変える)。amōはamātōteになり、agōはagitōteです。

    3人称複数の場合、第1・第2変化動詞については現在幹に-ntōを加えます。amōはamantō、moneōはmonentō とします(巻末の母音は短母音化します)。第3・第4変化動詞については現在幹に -untōを付け加えます。ただし第3変化動詞の場合、巻末のeを落とします。第4変化動詞の場合、巻末の母音は短母音化します。agōはaguntō、audiōはaudiuntōとします。

    命令法・能動態の種類

    二人称単数 二人称複数 三人称単数 三人称複数
    amō 現在 amā amāte
    未来 amātō amātōte amātō amantō
    videō 現在 vidē vidēte
    未来 vidētō vidētōte vidētō videntō
    agō 現在 age agite
    未来 agitō agitōte agitō aguntō
    capiō 現在 cape capite
    未来 capitō capitōte capitō capiuntō
    audiō 現在 audī audīte
    未来 audītō audītōte audītō audiuntō

    命令法・能動態の例文

    リンク先に文法の詳しい説明があります。

    禁止の命令文

    「~するな」という禁止を表す場合、nōlī+不定法(2人称単数)、またはnōlīte+不定法(2人称複数)の構文を用います。

    法律文には、nē+命令法・能動態・未来で禁止を表す表現が見られます。

    • Impius nē audētō plācāre dōnīs īram deōrum. Cic.Leg.2.22
    • 不敬な者が、大胆にも神々の怒りを捧げ物で宥めようとしてはならない。

    nē+命令法・現在は詩の中などに出てきます。文法書によっては本来の用法ではないと書かれていますが、実際よくお目にかかる表現です。

    命令法・受動態

    命令法の受動態を紹介します。amōを例に取ると次のような形になります。

    現在・2人称単数 amāre
    現在・2人称複数 amāminī
    未来・2人称単数 amātor
    未来・2人称複数 ―
    未来・3人称単数 amātor
    未来・3人称複数 amantor

    命令法・受動態・現在の2人称単数は、不定法(能動態・現在)と同じ形です。2人称複数は、受動態の現在、2人称複数の形と同じです。Amāre. は不定法として用いられる場合は「愛すること」ですが、文として出てきたら、「(あなたは)愛されよ」と訳すことになります。一方、Amāminī. は「あなた方は愛される」(直説法・受動態・現在、2人称複数)とするか、「(あなた方は)愛されよ」(命令法・受動態・現在、2人称複数)とするのかは、文脈によって判断することになります。

    命令法・受動態・未来は、現在幹(不定法の語尾から-reを取った形)に-torや-ntorを加えて作ります。ただし、第3変化の場合は、現在幹の末尾の母音eをiやuに変えます。例えば、第3変化agōの未来・2人称(3人称)の単数はagitor、3人称複数はaguntorです(能動態・現在、3人称複数の語尾に-orをつけた形と覚えたら早いです)。なお、命令法・受動態・未来は、2人称複数の形を欠いています。

    今述べたことは不規則動詞にも当てはまります。dōの命令法・受動態・現在、2人称単数はdare、2人称複数はdaminī、未来の2人称および3人称単数はdator、3人称複数はdantorです。ferōは同じ順にferre、feriminī、fertor、feruntorとなります。

    形式受動態動詞の命令法

    命令法・受動態を学ぶことで、形式受動態動詞の命令法がわかります。形式受動態動詞の命令法は一般動詞の受動態の命令法と同じです。

    形式受動態動詞の命令法の例文
    • Vērē ac līberē loquere.
    • ありのまま自由に語れ。

    • Sequere nātūram.
    • 自然に従え。

    • Turne, in tē suprēma salūs, miserēre tuōrum. Verg.Aen.12.653
    • トゥルヌスよ、おまえに最後の希望がかかっている。仲間を憐れむがよい。

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