Q. 三人称単数の能動態で、現在と完了が同じ形のものはどのように見分けているのでしょうか。
例)contendit
A. 単語だけを見ると区別がつきません。
文脈で見て判断できる場合があります(常にそうとは限りません。そこが悩ましい所です)。
カエサルの『ガリア戦記』第2巻12節に次の表現があります。
一番最後にcontenditが出てきます。
この文では完了と考えられます。なぜか?の理由を説明します。
[12] 1 Postrīdiē ēius diēī Caesar, prius quam sē hostēs ex terrōre ac
fugā reciperent, in fīnēs Suessiōnum, quī proximī Rēmīs erant,
exercitum duxit et magnō itinere [confectō] ad oppidum Noviodūnum
contendit.
<語釈>
Postrīdiē: 翌日(副詞)
ēius: 指示形容詞is,ea,id(その)の男性(または女性)・単数・属格。diēīにかかる。
diēī: diēs,-ēī c.(日)の単数・属格。Postrīdiēにかかる。
Caesar: Caesar,-saris m.(カエサル)の単数・主格。
prius: 「前に」。prius quamで「~より前に」。
quam: 「~よりも」。prius quamで「~より前に」。
sē: 3人称の再帰代名詞suī(自分)の男性・複数・対格。
hostēs: hostis,-is c.(敵)の複数・主格。男性名詞として用いられていると解釈。
ex: <奪格>から
terrōre: terror,-ōris m.(恐怖)の単数・奪格。
ac: 「そして」。terrōreとfugāをつなぐ。
fugā: fuga,-ae f.(逃走)の単数・奪格。
reciperent: recipiō,-ere(取り戻す)の接続法・能動態・未完了過去、3人称複数。
in: <対格>に
fīnēs: fīnis,-is c.(境界、<複数で>領土)の複数・対格。
Suessiōnum: Suessiōnēs,-um n.pl.(スエッシオーネース)の属格。fīnēsにかかる。
quī: 関係代名詞quī,quae,quodの男性・複数・主格。
proximī: 第1・第2変化形容詞proximus,-a,-um(<与格>に最も近い)の男性・複数・主格。
Rēmīs: Rēmī,-ōrum m.pl.(レーミー人)の与格。
erant: 不規則動詞sum,esseの直説法・未完了過去、3人称複数。
exercitum: exercitus,-ūs m.(軍隊)の単数・対格。
duxit: dūcō,-ere(導く)の直説法・能動態・完了、3人称単数。
et: 「そして」。duxitとcontenditをつなぐ。
magnō: 第1・第2変化形容詞magnus,-a,-um(大きな)の中性・単数・奪格。itinereにかかる。
itinere: iter,itineris n.(行軍)の単数・奪格。magnō itinereで「強行軍で」。
[confectō]: [ ] は削除の提案。conficiō,-ere(成し遂げる)の完了分詞、中性・単数・奪格。[ ]
内の言葉をあるものとみなした場合、magnō itinere
confectōは「絶対的奪格」。「大きな(magnō)行軍が(itinere)成し遂げられて(confectō)」。
ad: <対格>に
oppidum: oppidum,-ī n.(町)の単数・対格。
Noviodūnum: Noviodūnum,-ī n.(ノウィオドゥーヌム)の単数・対格。
contendit: contendō,-ere(急いで向かう)の直説法・能動態・完了、3人称単数。etで結ばれるペアduxitが完了ゆえ、contenditも完了ととる。
<逐語訳>
その(ēius)日の(diēī)翌日(Postrīdiē)カエサルは(Caesar)、敵が(hostēs)自分たちを(sē)恐怖(terrōre)と(ac)逃走(fugā)から(ex)取り戻す(reciperent)(=われに返る)よりも(quam)前に(prius)、レーミー人にとって(Rēmīs)最も近い状態(proximī)であった(erant)ところの(quī)スエッシオーネース人の(Suessiōnum)領土(fīnēs)に(in)軍隊を(exercitum)導き(duxit)、そして(et)大きな(magnō)行軍によって(itinere)(=強行軍で)ノウィオドゥーヌムという(Noviodūnum)町(oppidum)に(ad)急いで向かった(contendit)。
コメント