- 完了分詞の訳し方がよくわかりません。「述語的用法」、「属性的用法」の区別も含めて教えて下さい。
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具体例を見てみましょう。
1. Virtūs laudāta crescit. 美徳は賞賛されて成長する。
2. Litterae scriptae manent. 書かれた文字はとどまる。1は述語的に「~されて」、「~されると」と訳す例です。「賞賛された美徳は」としてもよいのですが、「美徳は賞賛されてこそ成長する」と言いたい文だと解釈します。逆に「賞賛されなければしぼんでしまう」という含みをもった表現とみなします。
2は属性的に「~された」とし、litteraeにかけます。「文字は書かれると」と述語的に訳しても意味は通じます。どちらで訳すかは文脈によります。
完了分詞といえば普通は2番の訳し方どまりの人が多いので、「述語的用法」としての訳し方にも慣れて頂きたいと思います。
ウェルギリウスの『農耕詩』に次の表現があります。
audit vocātus Apollō. Verg.Geo.4.7
この箇所については、「呼ばれたアポッローは(祈りを)聞く」でなく、「アポッローは呼ばれると(=祈りを捧げられるとその願いを)聞く」と理解するのがよいでしょう。
類似表現として次の例をご覧ください。
Fāta viam invenient aderitque vocātus Apollō. Verg.A.3.395
運命は道を見出すだろう。また、アポッローは祈りを捧げられるとその場に現れるであろう。ウェルギリウスの『アエネーイス』に見られる表現です。
- その他の例を挙げてください。
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我々は負けて勝ったのだ。
主語は省略された人称代名詞nōs(我々は)です。victīはvincō(打ち負かす)の完了分詞です(男性・複数・主格)。述語的に訳すと上の訳になります。Verbum semel ēmissum volat irrevocābile.
言葉は一度発せられると取り消せないまま飛んでゆく。
完了分詞ēmissumをVerbumにかけて「発せられた言葉は」と訳すこともできます。述語的用法ととるとき、「発せられると」と訳すことができます。Sī fractus illābātur orbis, impavidum ferient ruīnae.
もし天が粉砕されて落ちてきたら、その破片が恐れを知らぬ者を打ちのめすだろう。
完了分詞fractusはorbisと性・数・格が一致します。「粉砕された天が」とせず、「天が粉砕されて」と訳すのが自然です。Hannibal femur trāgulā graviter ictus cecidit.
ハンニバルは(Hannibal)腿の点で(femur)投げ槍によって(trāgulā)ひどく(graviter)打たれ(ictus)倒れた(cecidit)。
ictusは「īcō(or īciō), īcere, īcī, ictum 打つ」の完了分詞、男性・単数・主格です。
直訳は「打たれて」、「打たれた状態で」となります。なおfemurは「限定の対格」です。
参考図書
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