Disce libens.

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「ディスケ・リベンス」と読みます。
disce は「学ぶ」を意味する第3変化動詞 discō,-ere の命令法・能動態・現在、2人称単数です。「学べ」。
libens は第3変化形容詞libens,-entis(嬉しい、喜ばしい)の男性・単数・主格です。
disce で想定される2人称単数の主語tū(あなた)と性・数・格が一致します
副詞的に用いられ(→形容詞の副詞的用法)「喜んで」となります。
この一文全体は「喜んで学べ」または、「楽しく学べ」と訳せます。
アウソニウスの言葉とされます。

アウソニウスは4世紀帝政末期ローマの著述家です。

たった二語ですが、このラテン語は初心者にとって十分難しいです。下線を引いた部分の意味がとくに難しいです。以下かみくだいて説明します。

disceは「学べ」と訳せますが、学ぶのは誰でしょうか?disceは「(命令法・能動態・現在)2人称単数」なので、2人称単数イコール「あなた」です(ラテン語だとtū)。disceは「学べ」、すなわち「あなたは学ばないといけない」と言っています。
次に、そんな「あなた」とはどんな状態でしょうか?それを説明するのが形容詞libensです。
この文ですと、「あなた」イコール「嬉しい、喜ばしい状態」(libens)であることが示されています。
このイコール関係を成り立たせるべく、libensは男性・単数・主格の形になり、命令法disceの主語とみなされるtūと性・数・格を一致させています。すなわち、性は男性、数は単数、格は主格です。
つまり、「学べ」と言われている「あなた」は男性で、数は一人ゆえ単数で、学ぶ行為は「あなたが」行うので主格です。

このとき全体の直訳はこうなります。「あなたは(<tū>)喜ばしい状態で(libens)学べ(disce)」。これをもとにして「喜んで学べ」、すなわち「楽しく学べ」と意訳できます。

ちなみに私の運営する私塾「山の学校」のモットーはこの言葉です。Disce libens.を応用すると「楽しく生きよ」はVīve libens.になることがわかります。
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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

コメント

コメント一覧 (3件)

  • お尋ねいたします。
    学ぶことで自由を得る、というような意味で、西洋の図書館などでよく目にする言葉なのだそうですが、以前耳にし、探しているのですが見つかりません。スペルは間違えだと思いますが、たしか、discendo liberiorというようなものでした。もしご存知でしたら教えてください。

    • これでしょうか。
      Veritas liberabit vos. 真理は汝らを自由にするだろう。
      (https://www.kitashirakawa.jp/taro/?p=991)
      日本の大学の図書館でも目にするようです。
      「Veritas liberabit vos. 図書館」で検索するといろいろ例が見つかります。

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