
「ディスケ・リベンス」と読みます。
disce は「学ぶ」を意味する第3変化動詞 discō,-ere の命令法・能動態・現在、2人称単数です。「学べ」。
libens は第3変化形容詞libens,-entis(嬉しい、喜ばしい)の男性・単数・主格です。
disce で想定される2人称単数の主語tū(あなた)と性・数・格が一致します。
副詞的に用いられ(→形容詞の副詞的用法)「喜んで」となります。
この一文全体は「喜んで学べ」または、「楽しく学べ」と訳せます。
帝政末期ローマの詩人・著述家アウソニウス(Decimus Magnus Ausonius, 310年頃―395年頃)の言葉です。

アウソニウスは4世紀帝政末期ローマの著述家です。
たった二語ですが、このラテン語は初心者にとって十分難しいです。下線を引いた部分の意味がとくに難しいです。以下かみくだいて説明します。
disceは「学べ」と訳せますが、学ぶのは誰でしょうか?disceは「(命令法・能動態・現在)2人称単数」なので、2人称単数イコール「あなた」です(ラテン語だとtū)。disceは「学べ」、すなわち「あなたは学ばないといけない」と言っています。
次に、そんな「あなた」とはどんな状態でしょうか?それを説明するのが形容詞libensです。
この文ですと、「あなた」イコール「嬉しい、喜ばしい状態」(libens)であることが示されています。
このイコール関係を成り立たせるべく、libensは男性・単数・主格の形になり、命令法disceの主語とみなされるtūと性・数・格を一致させています。すなわち、性は男性、数は単数、格は主格です。
つまり、「学べ」と言われている「あなた」は男性で、数は一人ゆえ単数で、学ぶ行為は「あなたが」行うので主格です。



ここで男性形になるのは、ラテン語では一般的な「無標の形(慣用)」であり、実際の話者の性別を限定するものではありません。
このとき全体の直訳はこうなります。「あなたは(<tū>)喜ばしい状態で(libens)学べ(disce)」。これをもとにして「喜んで学べ」、すなわち「楽しく学べ」と意訳できます。



ちなみに私の運営する私塾「山の学校」のモットーはこの言葉です。Disce libens.を応用すると「楽しく生きよ」はVīve libens.になることがわかります。
<余談>
セネカにも Disce gaudēre.(「喜ぶことを学べ」)というよく似た言葉があります。こちらは「真の喜びとは何か」を問う哲学的な言葉ですが、Disce libens. はもっと素朴です。同じ学ぶなら、喜んで学ぼう。「やってみたい」と思う。やってみる。うまくいかない。別のやり方を試す。そして、少しできるようになる。考えてみれば、これが学びそのものです。
ローマの弁論家クィンティリアーヌスは『弁論家の教育』でこう述べています。
In pueris elucet spes plurimorum.
「少年たちの中には、実に多くの可能性への希望が輝いている。」
quae cum emoritur aetate, manifestum est non naturam defecisse, sed curam.
「それが年齢とともに消えてしまうなら、欠けていたのは生まれつきの素質ではなく、周囲の配慮であったことは明らかである。」(Quint. Inst. 1.1.2)
二千年近く前の教育論ですが、今読んでも耳の痛い言葉です。子どもの「学びたい」という気持ちを守るために、大人にできることの一つは、自分自身が楽しんで学ぶことではないでしょうか。「勉強しなさい」と言うより、大人が何かを夢中になって学んでいる姿のほうが、「学ぶとはどういうことか」をよく伝えることがあります。
Disce libens.
「喜んで学べ。」
子どもへの言葉である前に、まず大人が自分自身に向けたい言葉です。





コメント
コメント一覧 (3件)
お尋ねいたします。
学ぶことで自由を得る、というような意味で、西洋の図書館などでよく目にする言葉なのだそうですが、以前耳にし、探しているのですが見つかりません。スペルは間違えだと思いますが、たしか、discendo liberiorというようなものでした。もしご存知でしたら教えてください。
これでしょうか。
Veritas liberabit vos. 真理は汝らを自由にするだろう。
(https://www.kitashirakawa.jp/taro/?p=991)
日本の大学の図書館でも目にするようです。
「Veritas liberabit vos. 図書館」で検索するといろいろ例が見つかります。
[…] Disce libens. 楽しく学べ。 […]