ともに生き、ともに愛し合おう

カトゥッルスの『カルミナ』(『詩集』)第5歌は、
vivamus, mea Lesbia, atque amemus,
(ともに生きよう、愛しのレスビア、そして愛し合おう。)
で始まります。原文を訳と一緒にご紹介しましょう。

Vivamus mea Lesbia, atque amemus,
rumoresque senum severiorum
omnes unius aestimemus assis!
soles occidere et redire possunt:
nobis cum semel occidit brevis lux,
nox est perpetua una dormienda.

ともに生きようよ、愛しのレスビア、そして愛し合おう。
頭の固い年寄りの陰口は
みんな1アスの値打ちもないと考えようよ。
太陽は沈んでもまた昇ることができる。
私たちは、いったん短い光が沈んだら、
永遠に続くひとつの夜を眠らないといけない。

da mi basia mille, deinde centum,
dein mille altera, dein secunda centum,
deinde usque altera mille, deinde centum.

私に千の口づけをおくれ、それから百。
つづいてまた千。そして百。
それからまた千。つづけて百。

dein, cum milia multa fecerimus,
conturbabimus illa, ne sciamus,
aut ne quis malus invidere possit,
cum tantum sciat esse basiorum.

こうやって何千もの口づけをかわしたら、
数をごちゃごちゃにしてしまおう。何が何だかわからないように、
また口づけの数がこんなにも多いことを知って、
だれか性質(たち)の悪い男がねたまぬように。

カトゥッルスは、政治家キケロや伝記作家ネポスと同時代人でした。百あまりの詩をおさめた『詩集』を、次のような言葉とともにキケローに献じています。

今の、過去の、
そして未来のロムルスの
子孫たち(ローマ人)
の中で最も雄弁な方
マルクス・キケロ様へ。
最悪のへぼ詩人カトゥッルスが、
あなたに最大の感謝を捧げます。

あなたが最高のパトロンであるのと
同じだけ最悪の詩人カトゥッルスより。
(第49歌)

キケローはローマの伝統から隔絶したカリマコス(アレクサンドリア時代の詩人)の影響を受けた詩作の傾向に対しては批判的で、「新詩人」という言葉を用いて揶揄(やゆ)しました。

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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