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西洋古典
人間にとって技術とは何か
ウェルギリウスは、『農耕詩』第一巻118行以下で、人間の技術の発見と発展の歴史について次のように振り返っています。ヘーシオドスとルクレーティウスの影響が大きいと思われます。 118 しかし、人間と牛の労働が大地を耕すことで、これら(の農耕の苦労... -
西洋古典
『農耕詩』における多様性の問題
『牧歌』第四歌では、大地の自発性が新しいヘシオドス的黄金時代の特徴として示され、「すべての土地はすべてのものを生むだろう」(39 omnis feret omnia tellus)と言われています。他方、『農耕詩』ではこれとは対照的に、 「だが、すべての土地がすべ... -
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黄金時代がやってくる
ウェルギリウスによる黄金時代のテーマの受容 ウェルギリウスの『牧歌』第四歌には、「黄金時代が再来する」という考えが示されます(>>「すべての土地がすべてを生むだろう」)。この黄金時代はサトゥルヌス(ギリシア神話のクロノスに相当します)の時代... -
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アウリスのイピゲネイア
ギリシアの悲劇作家エウリピデスは、『アウリスのイピゲネイア』という作品を残しました。 イピゲネイアは、ギリシア軍を率いるアガメムノンの娘の名です。ギリシア軍はトロイアを攻めるためアウリスに集結しましたが、風が止まり船を出すことができません... -
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オデュッセウスの冥界行
オデュッセウスは、トロイア戦争を終え、故郷に帰る途中、アルキノオスの国に漂着します(アルキノオスの娘がナウシカア)。彼は王に促されるまま、それまでのいきさつを語りますが、そのエピソードの一つに、冥界をおとずれる話があります(第11歌)。 ウ... -
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オデュッセウスとナウシカア
以下は、パイエケス人の国に流れ着いたオデュッセウスと、彼に救いの手を差し出すナウシカア(=ナウシカ。パイエケス人の国の王女)の出会いの場面です。 余談ですが、バーナード・エヴスリンの『ギリシア神話小事典』(小林稔訳、教養文庫)のナウシカの... -
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望郷の思い
ホメロスの作とされる『オデュッセイア』は、トロイア戦争終結後、ギリシアの英雄オデュッセウスが故郷イタケへ帰還するエピソードを軸に展開します。第1巻冒頭は次のように始まります。 ムーサよ、わたくしにかの男の物語をして下され、トロイエ(トロイ... -
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ヘクトルの死
トロイアの英雄ヘクトルは、『イリアス』第22歌で、アキレウスに討たれ命を落とします。父プリアモス、母ヘカベの嘆願を聞かず、門外でアキレウスを迎え討とうとして。その最後の場面はこうです(355-66)。 「彼(アキレウス)に対し、輝く兜(かぶと)のヘ... -
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ヘクトルとアンドロマケ
『イーリアス』第6歌において、トロイア方の戦況は徐々に劣勢に転じます。ヘクトルはヘレノスの提案を 受け入れ、いったん城の中に戻ります。彼はアテネへの祈願を母ヘカベに託し、戦線を離れた弟パリスを叱責した後、妻子に出会います。 ヘレノスはヘクト...