「グラエキア・カプタ・フェルム・ウィクトーレム・ケーピト」と読みます。
Graecia は、「ギリシア」を意味する第1変化名詞 Graecia,-ae f.の単数・主格です。
capta は「捕らえる」を意味する第3変化動詞capiō,-ere の完了分詞 captus,-a,-umの女性・単数・主格です。Graecia にかかります。
「捕らえられたギリシアは」と訳せます。「捕らえられた」とは、「ローマによって捕らえられた」ということで、つまりは「ローマに占領されたギリシアは」という意味です。文全体の意味を考えるとき、「ギリシアは軍事面ではローマに占領されたけれども」という意味で理解できます。
ferum は「荒々しい」という意味を持つ第1・第2変化形容詞 ferus,-a,-um の男性・単数・対格です。victōrem にかかります。
victōrem は、「勝者」を意味する第3変化名詞 victor,-ōris m.の単数・対格です。ローマを意味します。
cēpit は、上で見た capiō,-ere の直説法・能動態・完了、3人称単数です。「捕らえた」となります。この文では「魅了する」という意味で使われています(「羅話辞典」(改訂版)の10番目に「魅了する」の意味が見つかります)。
ギリシアは軍事面ではローマに占領されたが、文化面では勝利者(だが野蛮な=文化的には劣った)ローマを捕らえた、すなわち「魅了した」という意味です。
capiō(とらえる)という同じ語を異なる文脈で巧みに使い分ける点にホラーティウスらしい言葉遊びが認められます。
直訳は、「捕らえられたギリシアは、野蛮な勝利者を捕らえた」と訳せます。
いわんとすることは、「武力においてローマに征服されたギリシアは、野蛮な勝利者ローマ人を、文化の面で魅了した(征服した)」という意味です。
ホラーティウスの『書簡詩』に見られる表現です(Ep.2.1.156)。
なお、表題の後、et artēs intulit agrestī Latiō.(そして、学問・芸術を粗野な(agrestī)ラティウムにもたらした)と続きます。主語はギリシアです。ラティウムはローマが建設された地域を指す名称です。
intulit は「もたらす、導入する」を意味する不規則動詞 inferō (in+ferō)の直説法・能動態・完了、3人称単数です。
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