「ファクタ・フギス・ファキエンダ・ペティス」と読みます。
facta は faciō,-ere(行う、なす)の完了分詞 factus,-a,-um の中性・複数・対格で、名詞的に用いられ、「なされたこと、成し遂げられたもの」を意味します。
fugis は fugiō,-ere(逃げる、避ける)の直説法・能動態・現在、2人称単数です。facta を目的語に取ります。facienda は faciō,-ere の動形容詞、中性・複数・対格で、これも名詞的に用いられ、「なされるべきこと、これから成し遂げるべきもの」を意味します。
petis は petō,-ere(求める、目指す)の直説法・能動態・現在、2人称単数です。facienda を目的語に取ります。
したがって、直訳すれば、「あなたは成し遂げられたものを避け、成し遂げるべきものを求める」となります。
この言葉は、オウィディウスの『名婦の書簡』第7歌に登場します(7.15)。カルタゴの女王ディードーが、彼女のもとを去ろうとするアエネーアースに語りかける場面です。
<補足>
ディードーは、アエネーアースが新しい土地を求めて旅立とうとすることに対し、すでにカルタゴという国があり、建設途上の城壁があり、王権まで彼に託されているではないか、と訴えます。そのうえで、
Facta fugis, facienda petis.
「あなたは成し遂げられたものから逃げ、これから成し遂げるべきものを求める」
と言うのです。
ここでは facta(すでになされたもの)と facienda(これからなされるべきもの)、fugis(逃げる)と petis(求める)がそれぞれ対照をなしています。すでに手にしているものには背を向け、まだ存在しないものを追い求める――そのアエネーアースの姿を、わずか四語で鮮やかに描いています。
もちろん、『アエネーイス』のアエネーアースには、イタリアへ向かうという神々から与えられた使命があります。しかしディードーの目から見れば、目の前にすでに国も愛もあるのに、それを捨てて未知の土地を求める彼の行動は理解しがたいものです。
この言葉は、そうした物語上の文脈を離れても、私たちに考えさせるものがあります。人はしばしば、すでに手にしているものの価値を十分に見ないまま、まだ手に入れていないものを追い求めます。
Facta fugis, facienda petis.――「すでにあるものから逃げ、これからのものを求める」。この短い対句には、人間の欲望や落ち着かなさを言い当てるような響きも感じられます。

コメント