語彙と文法
読みは、「ムルタエ・スント・カウサエ・ビベンディー」。
multae は「多くの」を意味する第1・第2変化形容詞multus,-a,-um の女性・複数・主格で、causae にかかります。
sunt はこの文の動詞で、主語は causae です。「~がある」という意味になります。
causae は、「原因・理由」という意味を持つ第1変化名詞causa,-ae f.の複数・主格です。
bibendī は第3変化動詞bibō,-ere(飲む)の動名詞bibendumの属格で、causae にかかります。「飲むことの理由」となります。
全体として「飲む理由はたくさんある」という意味になります。
飲む理由はいくらでもある
「飲むこと先にありき」の場合、口実は後からいくらでもついてきます。うれしいから飲む、悲しいから飲むといった具合に。
どんなときでも酒好きにとって、「だから、さあ飲もう!」(Ergō bibāmus.)という言葉は万能です。
ホラーティウスの詩に Nunc est bibendum. という言葉が見られます。「今こそ飲むべし」という意味で、慶事を祝し「さあ、飲もう」と呼びかけています。
Nunc est bibendum, nunc pede līberō pulsanda tellūs.
「今こそ飲むべし。今こそ自由な足で大地を踏むべし。」
飲酒に関する格言としては、「酒の中に真理あり」(In vīnō vēritās. )が有名で、酔えば本性が現れるという意味で用いられます。Vīnum animī speculum. (酒は心の鏡)という言い方もあります。
酔いつぶれることをラテン語では ēbrietās と言います。Aliud vīnum, aliud ēbrietās. (飲酒と酩酊は別のこと)といわれるとおり、飲酒も度を越えると酩酊にいたります。
セネカによれば、「酩酊とは、自発的な狂気以外の何物でもない」(Nihil aliud est ēbrietās quam voluntāria insānia.)と手厳しく、同様に酩酊を戒める格言としては、「酩酊は汝から節度と財産と名誉を奪う。」(Ēbrietās mōrēs aufert tibi, rēs et honōrēs. )などがあります。
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