語彙と文法
「ムルトース・フォルトゥーナ・リーベラト・ポエーナー・メトゥー・ネーミネム」と読みます。
multōs は「数多くの」という意味を持つ形容詞 multus の男性・複数・対格です。līberat の目的語です。
fortūna(運命)が文の主語です。
līberat は「解放する、自由にする」という意味を持つ第1変化動詞līberō,-āreの直説法・能動態・現在、3人称単数です。
poēnā は「罰」を意味する第1変化名詞poēna,-ae f.の単数・奪格です。līberō は「対格」(multōs)を「奪格」(poēnā)から解放する、という構造をとります。
したがって前半は、「運命は多くの者を罰から解放する」という意味になります。
後半の主語は省略されています。fortūna を補います。
metū は「恐怖」を意味する第4変化名詞 metus,-ūs m. の単数・奪格です。
nēminem は英語のnobody に相当するラテン語 nēmō(ネーモー)の単数・対格です。
動詞は前半と同じくlīberat です。
後半は、「(運命は)誰をも恐怖から解放しない。」となります。
罪を犯し、運良く法的責任をまぬがれても、良心の呵責が消えずに残るという意味でしょう。セネカの『倫理書簡集』に見られる言葉です(Sen.Ep.97.16)。
セネカ哲学全集〈6〉倫理書簡集II
セネカ Seneca
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