マルティアーリスの詩に見られる言葉です(8.78.7)。韻律の都合もあり、語順は少し変則的です。文頭の omnis (すべての)が文末の dies (日)を修飾し、動詞の habet(持つ)と目的語の sua dona (それ自身の贈り物を)を包み込む形になっています。字句通りに訳すと「すべての日は、それ自身の贈り物をもっている」となります。
「一日」が擬人化され、私たち人間に毎日新しい贈り物をプレゼントしてくれるというイメージが示されています。一日、一日、その日の贈り物があるという認識は、私たちの心を前向きにしてくれます。「今日はどんな贈り物があるのかな?」と素直な子どものような気持ちで朝を迎えることができます。
「贈り物」を受け取る人間は一見「受け身」の立場にあるように見えますが、そうではありません。この言葉をすてきだと感じ、素直な気持ちで「人生の恵み」に感謝できるかどうかは人それぞれです。
一見嫌なこと、つらいことに見舞われても、それらを苦しみとして排除する人もいれば、試練として受け入れ、乗り越える勇気を持つ人もいます。平凡に見える日常の中にも、大事なことに気づくきっかけを発見する人もいますし、たいくつだとため息をつく人もいます。日々の「贈り物」は「受け手」となる人を選ぶということです。
ラテン語では「カルペ・ディエム」に通じる言葉と言えますが、禅語の「日々是好日」を思い出すこともできます。
文法の説明はこちらです。>>Omnis habet sua dona dies.
Epigrams, Volume I: Spectacles, Books 1-5 (Loeb Classical Library)
Martial D. R. Shackleton Bailey
コメント
コメント一覧 (2件)
[…] (昨日の続きになりますが)二千年前のローマ人の言葉を借りれば「Omnis habet sua dona dies. 毎日その日の贈り物がある」ということになります。 […]
[…] ラテン語に「毎日その日の贈り物がある」(マルティアーリス)という言葉が示唆するのはこのことです。 […]