西洋古典

珍しきものが喜ばれる:マルティアーリス

2011年6月4日

マルティアーリスの詩に見られる表現です。マルティアーリスはエピグラムと呼ばれる短い詩を得意としました。表題の言葉は次の詩に出てきます。

rāra iuvant: prīmīs sīc mājor grātia pōmīs,
hībernae pretium sīc meruēre rosae.
珍しきものが喜ばれるのだ。林檎も初物ならいっそうよいし、
冬の薔薇なぞ、そりゃあ高値を呼ぶ。
マルティアーリス『エピグラム』第四巻29,3(柳沼重剛訳)

主語に当たる rāra は英語の rare(珍しい)の語源です。ラテン語の辞書には rārus,-a,-um の形で載っています(第1・第2変化形容詞)。 元来形容詞ですが、ここでは名詞として用いられています。形容詞の名詞的用法と呼ばれるもので、ちょっとした初学者泣かせの用法です。動詞の iuvant(=juvant) は「喜ばせる、楽しませる」という意味の他、「助ける、救う」という意味を持ちます(辞書ではjuvō,-āreで見つかります)。

用例としては、 Audentīs Fortuna iuvat.(運命の女神は勇敢な者たちを助ける)という格言を紹介します。この例でわかるとおり、iuvō(=juvō) は他動詞なので、audentīs (勇敢な者たちを)のような目的語を伴うのが本来です。一方、表題の Rāra iuvant.は表現上目的語を省略し、簡略化しています。ラテン語、特に韻文や格言的表現ではよくあることです。

「珍しいものは(人を)喜ばせる」と直訳してもよいのですが、意味をくんで「珍しいものが喜ばれる」と訳すわけです。

このように rāra iuvant. は、たった二語ですが、ラテン語らしい凝縮された表現であることがわかります。

関連図書:

ギリシア・ローマ名言集 (岩波文庫)
柳沼 重剛

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