「アド・ウトルムクゥェ・カースム・パラートゥス」と読みます。
adは「<対格>に対して」を意味する前置詞です。
utrumqueは「2人、2つのうちのどちらも」を意味する代名詞的形容詞uterque,utraque,utrumqueの男性・単数・対格です。
cāsumは「状況」を意味する第4変化名詞cāsus,-ūs m.の単数・対格です。
parātusは「(ad+対格)に準備の出来た、覚悟の出来た」を意味する第1・第2変化形容詞parātus,-a,-umの男性・単数・主格です。
「(その男は)どちらの状況にも覚悟の出来ている」、あるいは「どちらの状況にも覚悟が出来ている(男)」と訳せます。
ウェルギリウスの『アエネーイス』に見られる表現を元にして出来た表現です。
原文はin utrumque parātusとなっています(Verg.Aen.2.61-62)。
トロイヤ人をだますギリシャのシノンを形容する表現です。文脈をご紹介します(マクロン省略)。
Ecce, manus iuuenem interea post terga reuinctum
pastores magno ad regem clamore trahebant
Dardanidae, qui se ignotum uenientibus ultro,
hoc ipsum ut strueret Troiamque aperiret Achiuis, 60
obtulerat, fidens animi atque in utrumque paratus,
seu uersare dolos seu certae occumbere morti.
undique uisendi studio Troiana iuuentus
circumfusa ruit certantque inludere capto.
accipe nunc Danaum insidias et crimine ab uno 65
disce omnis.
見よ、この間、背中の後ろで手をしばられた若者を
ダルダニアの牧人たちが大きな叫び声をあげて、王の前に引き連れてきた。
進んで牧人たちの通る道に不審な男を装って身を差し出し、
そうすることで、トロイアをアカイア人のために開こうとしたのだ。
心は自信に満ち、いずれに対しても覚悟ができていた、
策略で切り抜けるにせよ、確実な死を迎えるにせよ。
一目その姿を見ようと、トロイアの若者たちは四方八方から
取り囲み、捕われた男をこぞってののしった。
さあ、ダナイ人の欺瞞の数々を聞いて欲しい。一つの悪事から
すべてを推しはかっていただきたい。