「ソルウェ・メトゥース」と読みます。
solve は「解く、ゆるめる」を意味する第3変化動詞 solvō,-ere の命令法・能動態・現在、2人称単数です。
metūs は「恐れ、不安」を意味する第4変化名詞metus,-ūs m. の複数・対格です。
「不安を解け」と訳せます。
ウェルギリウスの『アエネーイス』に出てくる表現です(1.463)。
背景については、「ユーノーの神殿の絵」をご覧下さい。
参考まで1.463は次の通りです。
Solve metūs; feret haec aliquam tibi fāma salūtem.’
不安を取り去るがよい。ここに描かれる名声は何らかの救済をおまえにもたらすだろう。
(語釈)
Solve: solvō,-ere(解く)の命令法・能動態・現在、2人称単数。
metūs: metus,-ūs m.(恐れ)の複数・対格。
feret: 不規則動詞ferō,ferre(もたらす)の直説法・能動態・未来、3人称単数。
haec: 指示形容詞hic,haec,hoc(この)の女性・単数・主格。fāmaにかかる。
aliquam: 不定形容詞aliquī,-qua,-quod(ある、何らかの)の女性・単数・対格。salūtemにかかる。
tibi: 1人称単数の人称代名詞、与格。
fāma: fāma,-ae f.(名声)の単数・主格。
salūtem: salūs,-ūtis f.(救済)の単数・対格。
<逐語訳>
恐れを(metūs)解け(Solve)。この(haec)名声は(fāma)何らかの(aliquam)救済を(salūtem)おまえに(tibi)もたらすだろう(feret)。
1.463 Solve metusと似た表現として、同じ作品の1.562 Solvite corde metum, Teucrī, seclūdite cūrās.(テウクリー人よ、心から恐れを解きなさい。不安を追い払いなさい」を想起させます。これはカルタゴの女王ディードーがトロイア人一行を前に、はじめて口を開いた時の言葉です。
さらに、同じ巻の最初のほうで(1.257-8)、(アエネーアースの母)ウェヌスにユピテルが次の言葉で語り始めたことを思い出します。
Parce metū,Cytherēa: manent immōta tuōrum/ fāta tibī: キュテーラの女神よ、不安は取り除くがよい。おまえの子孫の運命は変わらずにそのままだ。
この箇所の語釈は次の通りです。
Parce: parcō,-ere(<奪格>を慎む)の命令法・能動態・現在、2人称単数。
metū: metus,-ūs m.(恐れ)の単数・奪格。Parce metūで「恐れを慎め」、すなわち「恐れるな」。
Cytherēa=Cytherēia: Cytherēia,-ae f.(キュテーラ島の女神)の単数・呼格。キュテーラはウェヌスを崇める島。
manent: maneō,-ēre(とどまる、存続する)の直説法・能動態・現在、3人称複数。
immōta: 第1・第2変化形容詞immōtus,-a,-um(不動の)の中性・複数・主格。
tuōrum: tuī,-ōrum m.pl.(あなたの身内、仲間、部下)の属格。fātaにかかる。
fāta: fātum,-ī n.(運命)の複数・主格。
tibī: 2人称単数の人称代名詞、与格(「利害関係の与格」)。「おまえにとって」。
<逐語訳>
キュテーラの女神よ(Cytherēa)、おまえの子孫の(tuōrum)運命は(fāta)おまえにとって(tibi)不動のまま(immōta)とどまる(manent)。
アエネーイス (西洋古典叢書)
ウェルギリウス 岡 道男