語彙と文法
「ポスト・ヌービラ・ポエブス」と発音します。
post は対格を支配する前置詞で「<対格>の後、<対格>の後ろに」を意味します。英語でいえば、空間的前後関係を示すbehindと、時間的前後関係を示すafterの2つの意味を併せ持ちます。
nūbila は「雲」を意味する第2変化名詞 nūbilum,-ī n. の複数・対格です。
Phoebus は「太陽神アポロ」と「太陽」の2つの意味を持ちます。
動詞は省略されていますが、est(sumの直説法・現在、3人称単数)を補うと「雲の後(あと)に太陽(がある)」と訳すことができます。
「苦あれば楽あり」、「雨降って地固まる」などと意訳できます。
一方、post を空間的前後関係を示す前置詞ととれば、「雲の後ろに太陽(がある)」と訳せます。
言葉の解釈
Post nūbila Phoebus.の文頭のpost はラテン語の前置詞で、英語の after に相当します。ラテン語で post A と表現すると、「Aのあとで」という意味になります。手紙の末尾の略号 P.S. は「追伸」の意味をもちますが、これは Post Scriptum というラテン語の省略形です。つまり、「書かれたもの(scriptum)の後で (post)」というのが本来の意味です。
nubila は「雨雲」を指し、Phoebus(ラテン語読みでポエブス)は「太陽」を意味します。ポエブスは太陽神アポロのことです。表題のラテン語には動詞がありませんが、est を補うと「雨の後には太陽がある(出る)」という意味で理解できます。どんなに雨が続いてもいつかは晴れるように、苦しみが続いた後には必ず喜びが訪れることをこのラテン語は教えています。同じ事を伝える別のラテン語として、Post tenebras lux. (暗黒の後に光)を紹介しておきます。
さて、ここで別の解釈をご紹介します。前置詞 post は英語の behind と同様、空間的な前後関係を示す言葉です。その場合、「雲の後ろに太陽(が存在する)」と訳せます。どういう意味になるのでしょうか。私はこう考えます。「たとえ雨雲が空を覆っていても太陽の存在を疑うことができないように、世の中を不正の曇が覆っても、善の存在を疑うことはできない」と。
雨の日に太陽がなくなったと言う幼児がいるかもしれません。かりに世の中が不正だらけだとして、真・善・美が消えてなくなったわけではありません。理想を求めて学びの山を一歩一歩登る意義はこれからも変わらないと信じます。
このようにラテン語の表現は自分で自由に解釈を広げても楽しいです。
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