語彙と文法
「コンコルディア・ヌートリト・アモーレム」と読みます。
concordiaは「調和」を意味する第1変化名詞concordia,-ae f.の単数・主格です。
nūtritは「育てる」を意味する第4変化動詞nūtriō,-īreの直説法・能動態・現在、3人称単数です。
amōremは「愛」を意味する第3変化名詞 amor,-ōris m.の単数・対格です。
「調和は愛を育てる」と訳せます。
『カトーの二行詩』1.36に見られる言葉です。

調和は愛を育てる
『カトーの二行詩』は、古代末期に成立したと考えられるラテン語の教訓詩集です。この言葉は、次の二行の後半に登場します。
Litem inferre cave cum quo tibi gratia iuncta est;
ira odium generat, concordia nutrit amorem.
「あなたと親しい関係にある人に、争いを仕掛けないようにせよ。
怒りは憎しみを生み、調和は愛を育てる。」
表題の Concordia nūtrit amōrem. は、人と人との関係において、調和が愛情や親しさを育てることを簡潔に表した言葉です。
文法的に見ると、concordia は「調和、一致」を意味する女性名詞の主格、nūtrit は「養う、育てる」、amōrem は「愛」を意味する男性名詞 amor の対格です。したがって、文字どおり「調和は愛を育てる」という意味になります。
二行目では、īra(怒り)と concordia(調和)、odium(憎しみ)と amor(愛)が鮮やかに対置されています。怒りは憎しみを生み、調和は愛を育てる――人間関係が向かう二つの方向を、簡潔な対句で示しています。
さらに第一行を見ると、この教えがとくに「すでに親しい関係にある人」に向けられていることがわかります。親しい間柄であっても、争いを重ねれば憎しみが生まれます。逆に、相手を尊重し、調和を保とうとする姿勢によって、その関係はさらに深まっていきます。
ここでいう「調和」は、すべてが完全に一致することではないでしょう。考え方や価値観が異なっていても、互いの違いを認め、共に歩む道を探すことができます。そのような積み重ねの中で、愛や友情は育っていきます。
Concordia nūtrit amōrem.――調和は愛を育てる。前半の「怒りは憎しみを生む」と対にして読むことで、この短い言葉はいっそう強い印象を残します。


