表題はカトリック教会の聖歌の歌詞の一部です。māterはイエスの母マリアを指します。
語彙と文法
「スターバト・マーテル・ドローローサ」と読みます。
stābatは「立つ」を意味する第1変化動詞stō,-āre の直説法・能動態・未完了過去、3人称単数です。「立っていた」。
māterは「母」を意味する第3変化名詞 māter,-tris f.の単数・主格です。「母は」。
dolōrōsa は「痛ましい、悲しみに満ちた」を意味する第1・第2変化形容詞dolōrōsus,-a,-um の女性・単数・主格です。māterと性・数・格が一致します。
dolōrōsaをmāterにかけて訳す(=属性的用法とみなして訳す)と、「悲しげな母が立っていた」となります。
一方、副詞的に訳すと、「一人の母親が悲しげに立ちすくんでいた」となります。
続きの表現
以下の通り続きます。
iuxtā Crucem lacrimōsa,
dum pendēbat Fīlius.
iuxtā=juxtā: <対格>のそばに
Crucem: crux,crucis f.(十字架)の単数・対格。
lacrimōsa: 第1・第2変化形容詞lacrimōsus,-a,-um(涙ぐんでいる)の女性・単数・主格。māterと性・数・格が一致。stābatにかかる副詞的用法ととり、「涙ぐみながら」と訳します。
dum: ~の間
pendēbat: pendeō,-ēre(つるされる)の直説法・能動態・未完了過去、3人称単数。
Fīlius: fīlius,-ī m.(息子)の単数・主格。
息子が(Fīlius)つるされている(pendēbat)間(dum)、十字架(Crucem)のそばで(iuxtā)涙ぐみながら(lacrimōsa)
さらに続きます。
続きの表現
Cūius animam gementem,
contristātam et dolentem
pertransīvit gladius.
Cūius=Cūjus: 関係代名詞quī,quae,quodの男性・単数・属格。代名詞の代用。「彼の」。先行詞はFīlius。
animam: anima,-ae f.(魂)の単数・対格。
gementem: gemō,-ere(うめく、嘆く、嘆息する)の現在分詞、女性・単数・対格。animamにかかる。
contristātam: contristō,-āre(悲しませる)の完了分詞、女性・単数・対格。animamにかかる。
et: 「そして」。contristātamとdolentemをつなぐ。
dolentem: doleō,-ēre(痛む、苦しむ)の現在分詞、女性・単数・対格。animamにかかる。
pertransīvit: pertranseō,-īre(通り抜ける、突き抜ける、貫く)の直説法・能動態・完了、3人称単数。
gladius: gladius,-ī m.(剣)の単数・主格。
彼の(Cūius)嘆く(gementem)魂を(animam)──悲しまされ(contristātam)そして(et)苦しむ(dolentem)魂を(animam)──剣が(gladius)貫いた(pertransīvit)。
言葉の解説:ウィキペディア
ウィキペディアの説明は次の通りです。
スターバト・マーテル (ラテン語: Stabat Mater)は、13世紀のフランシスコ会で生まれた[1]カトリック教会の聖歌の1つである。詩の作者は明らかでなく、ヤコポーネ・ダ・トーディ、インノケンティウス3世、ボナヴェントゥラらが候補としてあげられる[2]。題名は最初の1行(Stabat mater dolorosa、悲しみの聖母は立ちぬ)からとられている(インキピット)。日本語では「悲しみの聖母」「聖母哀傷」とも。
中世ヨーロッパの詩の中でも極めて心を打つものの一つであり、わが子イエスが磔刑に処された際、十字架の傍らに立っていた母マリアが受けた悲しみを思う内容となっている。
スターバト・マーテル:ウィキペディア