どの港を目指すかわからなければ順風は吹かない

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Ignoranti quem portum petat, nullus ventus est.

風は誰にも平等に吹きますが、目標を定めた人には順風と逆風の区別ができます。目標がなければどの風も同じ風です。表題の言葉は、環境を活かすも殺すもその人の志ひとつである、と解釈できます。

かのアルキメデスも目標設定が明確であったからこそ、風呂場のお湯が流れるのを見て「ヘウレーカ(私は発見した)」と快哉を叫ぶことができましたし、ニュートンも林檎が木から落ちるのを見て万有引力の法則を発見できました。

クオバディス(Quo vadis?)というラテン語があります。「あなたはどこに行くのか」という意味です。この名前の手帳もあり日本でも人気があります。人生を旅と見立て、あなたはどのような旅のアイデアを温めているのか、それに向けて日々どのようなプラニングをしているのか。このような問い掛けをネーミングに込めているのだと思われます。毎日自分のライフプランニングを見つめ、目標に向かって着実に歩んでいけたら何より素晴らしいことです。

表題はセネカの『ルキリウス宛て書簡集』に見られる言葉です。先行する箇所では「矢を射る者はまず何を射るのかを知らなければならない」と述べています。混迷の時代の中でも目標を見失わず、堅実に生きる気概を持つすべての人にとって、お勧めのラテン語と言えるでしょう。ボン・ボヤージュ。

セネカ哲学全集〈5〉倫理書簡集 I
兼利 琢也

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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