
語彙と文法
「クゥォー・モリトゥーレ・ルイス」と読みます。
quō は「どこへ」を意味する疑問副詞です。
moritūre は「死ぬ」を意味する形式所態動詞 morior,-rī の未来分詞、男性・単数・呼格で、「死にゆく者よ」と訳せます。
ruis は「突進する、急ぐ」を意味する第3変化動詞 ruō,-ere の直説法・能動態・現在、2人称単数です。
「どこに急ぐのだ、死にゆく者よ」という意味になります。
ウェルギリウスの『アエネーイス』に見られる表現です(10.811)。
文脈説明
811-816
‘quo moriture ruis maioraque uiribus audes?
fallit te incautum pietas tua.’ nec minus ille
exsultat demens, saeuae iamque altius irae
Dardanio surgunt ductori, extremaque Lauso
Parcae fila legunt. ualidum namque exigit ensem 815
per medium Aeneas iuuenem totumque recondit;
「どこへ突っ込んでゆくのだ、死にゆく者よ。おまえは身の力に余ることを敢えている。
無警戒なおまえは、その孝心に欺かれているのだ」。それでもラウススは我を忘れて
ますます勢いづく。今やダルダニアの指揮官の胸には凄まじい怒りが
いっそう激しくこみ上げ、運命の女神たちはラウススの
最後の糸を巻き取った。アエネーアースは力強い剣を 815
若者の体の真ん中へ突き通し、その刃をすっかり体内に埋めた。
表題の言葉は、ウェルギリウス『アエネーイス』第10巻で、アエネーアースが若者ラウススに向かって発する言葉です。
quo moriture ruis maioraque viribus audes?
fallit te incautum pietas tua.「どこへ突っ込んでゆくのだ、死にゆく者よ。おまえは身の力に余ることを敢えている。
無警戒なおまえは、その孝心に欺かれているのだ」。
ラウススは、父メゼンティウスを守るため、アエネーアースの前に立ちはだかります。ここで注目したいのは pietas という言葉です。ラウススを死へと向かわせたのは、単なる無謀さではなく、父を思う『孝心』でした。
アエネーアースはそのことを見抜き、「おまえの孝心がおまえを欺いている」と呼びかけます。しかしラウススは退かず、ついにアエネーアースの剣に倒れます。
したがって Quo moriture ruis? は、単に「死にゆく者よ、どこへ急ぐのか」という一般的な警句ではありません。愛する者を守ろうとして、みずから死へと突き進む若者に向けられた、悲痛な呼びかけです。
文献案内
アエネーイス (西洋古典叢書)
ウェルギリウス 岡 道男 
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