ラテン語入門のエッセイ– ラテン語入門のエッセイ –
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ラテン語入門のエッセイ
スキーピオーの風呂
哲人セネカは機会に恵まれ、古代の英雄スキーピオーの別荘に泊まります。没後二五〇年以上経ってからのこと。スキーピオーは宿敵カルタゴを破ったローマの将軍です。 セネカはこの別荘の風呂場を見て感動します。現代の贅を尽くした大浴場と異なる静謐さを... -
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Tacens vocem verbaque vultus habet. 沈黙した顔は声と言葉を持つ
オウィディウスの詩句です。無言の表情は雄弁だという逆説です。なぜ無言なのでしょうか。悲しいのか、怒っているのか、それとも感動しているのか。この一文だけでは何もわかりません。いろいろ解釈できる余地が残っています。 これは『恋の技法』の中に見... -
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Dies dolorem minuit. 月日が苦悩を和らげる
Dies dolorem minuit. 月日が苦悩を和らげる Dies dolorem minuit. これはイギリスの学者ロバート・バートンの言葉として知られます。ラテン語の dies は英語の day に当たります。月日が苦悩を和らげるということは、程度の差こそあれ、誰もが体験を通し... -
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天声人語
Vox populi vox dei.というラテン語があります(リンク先に文法の説明があります)。 表題をそのまま訳すと「民衆の声は神の声(である)」となります。「天声人語」という表現はこのラテン語を元にしているようです。vox populi が「民の声」、vox dei が... -
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Otia dant vitia. 小人閑居して不善をなす
語彙と文法 「オーティア・ダント・ウィティア」と読みます。ōtia は「閑暇」を意味する第2変化名詞 ōtium,-ī n. の複数・主格です。文の主語です。dant は「与える」を意味する不規則動詞 dō,dare の直説法・能動態・現在、3人称複数です。vitia は「悪徳... -
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Finem lauda.
語彙と文法 「フィーネム・ラウダー」と読みます。fīnem は「終わり」を意味する第3変化名詞 fīnis,-is c. の単数・対格です。c.はcommon genderの略語で男性名詞、女性名詞の両性で使われます。laudā は「称える」を意味する第1変化動詞 laudō,-āre の命... -
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髭は哲学者をつくらない
一見ユーモラスな表現ですが、いわんとすることは鋭いです。見かけ倒しを戒める警句です。「わたしは髭とマントを見るが哲学者は目にしない」(Videō barbam et pallium, philosophum nōn videō.)というゲッリウスの表現や、「頭巾は僧を作らず」(Cucull... -
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Nemo in amore videt. 恋は盲目
表題のラテン語を文字通り訳せば「誰も恋において(ものを)見ていない」となります。「恋は盲目」は英語で Love is blind. と言いますが、ラテン語では Amor caecus est. と言います。 caecus は「盲目の、正しい判断が下せない」という意味で、たとえば ... -
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旅を見守る言葉:Pax intrantibus, salus exeuntibus.
Pax intrantibus, salus exeuntibus. 訪れる者に安らぎを、去りゆく者に安全を この言葉は、ドイツのローテンブルクという街にあるシュピタール門に刻まれているラテン語として知られています。 文頭のpax は「安らぎ、平和」を、salūs は「幸せ、安全、...