「カルペ・ディエム」と読みます。
「一期一会」と訳されることもあるようですが、「カルペ・ディエム」の意味の本質は「死を忘れるな」ということです。直訳は、「一日を摘め」となりますが。
文法の説明は次の通りです。
第3変化動詞 carpō,-ere は「(花を)摘む」の意味を持ちます。carpe は命令法・能動態・現在、2人称単数で、「摘め」と訳せます。
diemは、「日」を意味する第5変化名詞 diēs,-ēī m. の単数・対格です。
「一日(の花)を摘め」と訳せます。
「今日の日を大切に」と意訳できます。
carpe の語を意識したとき、人はその目的語として flōrēs (花々)、たとえばrosās (バラ)などを目的語として想像するでしょう。ところが、この表現において、目的語は diem (日)です。
ここに、diem イコール flōrēs (すなわち、一日一日を花々とみたてる)といったイメージの重なりが演出されます。
何気なく過ぎゆく毎日を、いわば花畑の花々とみなし、花の一本一本を愛おしむように日々を愛すのがよい、という意味が込められています。
ローマの詩人、ホラーティウスの詩の中の言葉です(Carm.1.11)。その全訳をぜひご一読ください。いわば古代のラブソングです。
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コメント
コメント一覧 (4件)
[…] 「エデ・ビベ・ルーデ・ポスト・モルテム・ヌッラ・ウォルプタース」と読みます。 ede は動詞 edō,-ere(食べる)、bibe はbibō,-ere(飲む)、lūde はlūdo,-ere(遊ぶ)の各々命令法・能動態・現在、2人称単数です。 英語に edible (食べられる)という言葉がありますが、edō がその語源です。 postは(~の後で)は対格を取ります。 mortemは第3変化名詞 mors,mortis f.(死)の単数・対格です。 nullaは代名詞的形容詞nullus,a-,-um(ない)の女性・単数・主格です。意味は英語のnoに相当し、voluptas にかかります。 voluptāsはvoluptās,-ātis f.(快楽)の単数・主格です。 動詞estが省略されています。estは不規則動詞sum,esse(ある、存在する)の直説法・現在、3人称単数です。 訳は、「食べろ、飲め、遊べ、死後に快楽はなし。」となります。景気のいいフレーズですね。 カトゥルスがこのモチーフを使って有名な詩を残しています。いわく、「ともに生き、ともに愛し合おう」(Vīvāmus, mea Lesbia, atque amēmus.)と。 一見ホラーティウスの「カルペ・ディエム(Carpe diem.)」と似ていますが、考え方の中身は異なっていると思われます。 […]
[…] Carpe diem.(1日を摘め)もそうですが、1と2だけでは個々のセンテンスを通して作者が何を伝えたいのか、腑に落ちないことがあります。いわゆる「正しく訳せても意味がわからない」といったケースです。 […]
[…] Carpe diem. その日を摘め。 […]
むかしからこの言葉は知っていたんだけど、īとかēにならないのか気になっていました。
ちゃんと勉強すればいいんだけど、そこまでしてラテン語を覚えるつもりもないので。
とくに英語以外の言葉だといい加減な記述が横行している (どうせ誰もわからないから) ので真実にたどり着くのがむずかしいです。
この記事を読んで、どうやらCarpe diem.ではすべてi, eであろうことが確認できました。