ラテン語格言

Est res publica res populi.

「エスト・レース・プーブリカ・レース・ポプリー」と読みます。
estは不規則動詞sum,esse(である)の直説法・現在、3人称単数です。
rēsは「もの、こと」を意味する第5変化名詞rēs,reī f.の単数・主格です。文の主語です。
pūblicaは第1・第2変化形容詞pūblicus,-a,-um(公の)の女性・単数・主格で、rēsにかかります。
rēs pūblicaだけで「公のもの」と訳せますが、文脈に照らすと「国家」を意味します。キケローは国家を「公のもの」と定義しています。
二つ目のrēsも一つ目と同じく、第5変化名詞rēs,reī f.の単数・主格です。こちらは文の補語です。
populīはpopulus,-ī m.(国民)の単数・属格で、rēsにかかります。rēs populīだけで「国民のもの」と訳せます。
全体で、「国家とは国民のものである」と訳せます。
キケローの『国家について』に見られる表現です(Cic.De Re Publica 1.39)。

原文には続きがあります。「しかし、国民とはなんらかの方法で集められた人間のあらゆる集合ではなく、法についての合意と利益の共有によって結合された民衆の集合である」(岡道男訳)。国家を成立させる国民の条件として、「法についての合意」と「利益の共有」が強調されています。ここに「法治国家」の理念が示唆され、「利益を独占」する専制国家のあり方が暗に批判されます。共和制の理念を知るうえで、キケローの『国家について』は必読書といえるでしょう。

せっかくなので対応するラテン語を示すと次の通りです。岡訳がいかに原文に忠実かが見て取れます。

populus autem non omnis hominum coetus quoquo modo congregatus, sed coetus multitudinis iuris consensu et utilitatis communione sociatus.

「しかし(autem)、国民とは(populus)なんらかの方法で(quoquo modo)集められた(congregatus)人間の(hominum)あらゆる(omnis)集合(coetus)ではなく(non)、法についての(iuris)合意(consensu)と(et)利益の(utilitatis)共有によって(communione)結合された(sociatus)民衆の(multitudinis)集合(coetus)である」。

ここで蛇足を少々。「プロボノ」という言葉を見聞きすることがありますが、元はラテン語で、prō bonō pūblicō(プロー・ボノー・プーブリコー) のことです。prōは「~のために」を意味する前置詞。bonōは「善」を意味する名詞、pūblicōは上で見た「公の」を意味する形容詞。直訳すれば「公の(pūblicō)善(bonō)のために(prō)」となります。pūblicaは英語のpublicの語源です。レース・プーブリカ(国家)に生きる者は、「共通の利益」を守り育てるべし、というキケローの考えが今に息づいているかのようです。

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