Nusquam est qui ubique est. どこにでもいる者はどこにもいない

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Seneca
セネカ

語彙と文法

「ヌスクゥァム・エスト・クィー・ウビークゥェ・エスト」と読みます。
nusquam は「どこにも~ない」を意味する副詞です。
quī は関係代名詞quī,quae,quod の男性・単数・主格で、「~するところの(人)」を意味します。
ubīque は「どこにでも」を意味する副詞です。
「どこにでもいる人はどこにもいない」と訳せます。
あれこれ手をつけて一つのことに集中できない精神を戒める言葉です。
セネカの『倫理書簡集』に見られる言葉です(Ep.2.2)。文脈は次の通りです。

乱れのない精神を示す第一の証左は、立ち止まってじっくり自分との時間を過ごせることだと思う。だが、気をつけたまえ。君のようにたくさんの作家やあらゆる分野の書物を読んでいると、あてどなく不安定な面も生じかねないからね。これと見定めた才能豊かな作家に時間をかけて自分の肥やしとすべきだよ、もし変わることなく心に残るものを引き出したいと思うならね。どこにでもいるということは、どこにもいないということだ。(高橋宏幸訳)

「どこにでもいるということは、どこにもいないということだ」のモチーフは、エピクロス派の詩人ルクレーティウスの「誰もが自分から逃げようとする」という言葉と関連しているように感じられます(セネカが参照した可能性は高いです)。

Seneca

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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