語彙と文法
「セー・クゥィスクゥェ・フギト」と読みます。
sē は3人称の再帰代名詞suī(自分)の男性・単数・対格です。「自分を」。
quisque は「めいめい、各々」を意味する不定代名詞quisque,quaeque,quidqueの男性・単数・主格です。「各々は」。
fugit は「逃れる」を意味する第3B変化動詞fugiō,-gere の直説法・能動態・現在、3人称単数です。
「誰もが皆自分自身から逃れようとする」と訳せます。
ローマの教訓詩人ルクレーティウスの言葉です(3.1068).
物の本質について (岩波文庫 青 605-1)
ルクレーティウス 樋口 勝彦
第3B変化動詞について
不定法(・能動態・現在)が-ereで終わりながら、直説法・能動態・現在、1人称単数が第4変化動詞のように-iōで終わるものを第3B変化動詞と呼びます。
上のfugiō(逃げる)がこれにあたります。
agō,-ere (3) | fugiō,-ere (3B) | audiō,-īre(4) | |
1人称単数 | agō | fugiō | audiō |
2人称単数 | agis | fugis | audīs |
3人称単数 | agit | fuit | audit |
1人称複数 | agimus | fugimus | audīmus |
2人称複数 | agitis | fugitis | audītis |
3人称複数 | agunt | fugiunt | audiunt |
第3変化動詞agō,-ere(行う)、第3B変化動詞fugiō,-ere(逃げる)、第4変化動詞audiō,-īre(聞く)の活用を見比べてください。
3Bの動詞は、母音iの長短を無視すると第4変化動詞に近いことがわかります。ただし不定法(・能動態・現在)が-ereで終わるため、あくまでも3であって4ではない、ということになります。
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