テレンティウス『アンドロスの女』より

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Sī mihi pergit quae vult dīcere, ea quae nōn vult audiet.

ローマの喜劇作家テレンティウスの言葉です。

語彙と文法

Sī: もしも
mihi: 1人称単数の人称代名詞、与格。
pergit: pergō,-ere(<不定法>を続ける)の直説法・能動態・現在、3人称単数。主語は省略されたille(彼が)。pergitの要求する不定法はdīcere。
quae: 関係代名詞quī,quae,quodの中性・複数・対格。先行詞は省略されたea(指示代名詞is,ea,idの中性・複数・対格)。
vult: 不規則動詞volō,velle(<不定法>を望む)の直説法・能動態・現在、3人称単数。vultの要求する不定法はdīcere。
dīcere: dīcō,-ere(言う)の不定法・能動態・現在。
ea: 指示代名詞is,ea,id(それ)の中性・複数・対格。audietの目的語。
quae: 関係代名詞quī,quae,quodの中性・複数・対格。先行詞はea。
nōn: 「~でない」。vultを否定。
vult: 不規則動詞volō,velle(<不定法>を望む)の直説法・能動態・現在、3人称単数。vultの要求する不定法はaudīre(audiōの不定法・能動態・現在)。
audiet: audiō,-īre(聞く)の直説法・能動態・未来、3人称単数。

逐語訳

もし(Sī)彼が私に(mihi)彼が語ることを(dīcere)望む(vult)ところの(quae)ことを(<ea>)語ることを(dīcere)続ける(pergit)なら、彼は聞くことを(<audīre>)望まない(nōn vult)ところの(quae)ことを(ea)聞くであろう(audiet)。

和訳

向こうがわたしにむかって、自分の言いたいことばかりいつまでも言うんなら、あっちも、聞きたくないことばかり聞くことになろうぜ。(柳沼重剛訳)

柳沼重剛著、「ギリシャ・ローマ名言集」6番目に掲載されているラテン語です。テレンティウス『アンドロスの女』920(第5幕4, 17)の表現です。
Terentius

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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