Alea jacta est. 賽は投げられた。

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ユリウス・カエサル
ユリウス・カエサル

語彙と文法

「アーレア・ヤクタ・エスト」と読みます。
Ālea は第1変化名詞 ālea,-ae f.の単数・主格で、「賽、さいころ」の意味です。
jacta は「投げる」を意味する jaciō,-ere の完了分詞 jactus,-a,-um の女性・単数・主格で、ālea と性・数・格が一致しています。
estは不規則動詞sum,esseの直説法・現在、3人称単数です。
完了分詞 jacta とest の組み合わせを直説法・受動態・完了とみなすことができます。
訳は「賽は投げられた」です。
後戻りはできない不退転の決意を表す言葉として知られます。

スエートーニウスの記したカエサル(ジュリアス・シーザー)の言葉(岩波文庫『ローマ皇帝伝』、國原 吉之助訳)として有名です(Suet.Caes.32)。

ラテン語の受動態のちょっとした落とし穴

上で説明した通りこの文の動詞jacta estは完了分詞(英語の過去分詞)とest(英語のisに相当:つまり時制は現在)の組み合わせです。英語も受動態はbe動詞と過去分詞の組み合わせで作ります。少しラテン語を学んだ人は「おや?」と思うかもしれません。

英語の場合「現在」の受動態を表す場合、be動詞の現在と過去分詞を組み合わせます。ラテン語の場合「過去」の受動態を表す場合、sum動詞の現在(過去でなく!)と完了分詞を組み合わせます。

逆にラテン語で現在の受動態を表す場合、動詞そのものの語尾を活用させます。「私は愛される」はAmorとなります。「私は愛された」は男性の場合Amātus sum.、女性の場合Amāta sum.です。Amātus sum.は英語のI am loved.でなくI was loved.に相当するという点に注意してください。

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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