Nil homini certum est. 諸行無常

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語彙と文法

nīl は nihil(何も〜ない)の短縮形で、「何もないもの」「無」を意味します。
hominī は「人間」を意味する第3変化名詞 homō, hominis c. の単数・与格です。
certum は「確かな」を意味する形容詞 certus,-a,-um の中性・単数・主格で、ここでは nīl を受けています。
est は「〜である」を意味する不規則動詞 sum,esse の直説法・現在、3人称単数です。

直訳すると、「人間にとって確かなものは何もない」となります。

出典は、流刑先で不安定な境遇に置かれていたオウィディウスの『悲しみの歌』(5.5.27)です。栄華も境遇も一瞬で移り変わるという感覚には、日本語の「諸行無常」に通じるものがあります。人間の運命の不確かさを、簡潔な言葉で鋭く表した一句と言えるでしょう。

文献案内

悲しみの歌・黒海からの手紙 (西洋古典叢書)
オウィディウス 木村 健治

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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