Varietas delectat. いろいろあるから面白い:キケロー

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キケロー

語彙と文法

「ウァリエタース・デーレクタト」と読みます。
varietās は「多様性」を意味する第3変化名詞 varietās,-ātis f.の単数・主格です。
dēlectat は、「喜ばせる」を表す第1変化動詞 dēlectō,-āre の直説法・能動態・現在、3人称単数です。
直訳は「多様性は喜ばせる」となります。
「いろいろあるから面白い」という意味ですね。

言葉の背景

キケローの『神々の本性について』(De Natura Deorum)に見られる言葉とみなされます。
文脈は、以下の通りです。原文と照合すると、Varietas delectat.でなくVarietāte…dēlectārī(多様性によって心を楽しませること)となっています。

1-22
[22] isto igitur tam inmenso spatio, quaero, Balbe, cur Pronoea vestra cessaverit. Laboremne fugiebat? At iste nec attingit deum nec erat ullus, cum omnes naturae numini divino, caelum, ignes, terrae, maria, parerent. Quid autem erat, quod concupisceret deus mundum signis et luminibus tamquam aedilis ornare? Si, ut [deus] ipse melius habitaret, antea videlicet tempore infinito in tenebris tamquam in gurgustio habitaverat. Post autem: varietatene eum delectari putamus, qua caelum et terras exornatas videmus? Quae ista potest esse oblectatio deo? Quae si esset, non ea tam diu carere potuisset.

それゆえ、バルブスよ、わたしの尋ねたいのは、それほど大きな時の広がりの中で、なぜあなたがたのプロノイアーは惰眠をむさぼっていたのかという点である。それは労苦(1)を厭ったからであろうか。だが労苦は神の属性ではないし、天、火、大地、海といったすべての自然の元素(2)が神の意志に従ったとき、神にいかなる労苦もなかったはずである。そもそも神が造営官(3)よろしく、宇宙を星座や光で飾ろうと欲するとはいったいいかなることか。もし神が居心地のよい場所に住もうと欲してのことであれば、それ以前は果てしなく長い期間にわたり、神はあばら屋に住むごとく暗黒の中で暮らしていたことになるだろう。その後、神はわたしたちが目にするような天と地を彩るさまざまな装いに心を楽しませるようになったと考えるべきなのか。しかし神にはどのような気晴らしが必要だというのか。かりに必要だとしても、神があまりにも長期にわたりその気晴らしをもたずにいたとは考えられない。

(1)ストア派の神々が労苦に満ちているという批判については、一巻五二節参照。
(2)四元素については一巻二九節、一〇三節、二巻二八節、八三節、八四節、三巻三四節、三六節参照。
(3)造営官(aedilis)は公共物の建造と管理を司ったが、加えて公の祝祭行事の開催、運営にもあたり、そのさい公共の建物の飾り付けも行った。

Cicero

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

コメント

コメント一覧 (1件)

  • […] Cōgitō ergo sum. 私は考える。ゆえに、私は存在する。 Dum spīrō, spērō.(私が)息をする間は、希望がある。 Aquila nōn captat muscam. 鷲(わし)は蠅(はえ)をつかまえない。 Bonī amant bonum. 善人は善を愛する。 Fāma volat. 噂が飛ぶ。 Varietās dēlectat. 多様性は喜ばせる。 […]

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