Quo fata trahunt, retrahuntque, sequamur.

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ギリシア・ローマ名言集

語彙と文法

「クゥォー・ファータ・トラフント・レトラフントクゥェ・セクゥァームル」と読みます。
quō は関係副詞で「~する方に」と訳せます。
fāta は「運命」を意味する第2変化名詞 fātum,-ī n. の複数・主格です。
trahunt は「運ぶ」を意味する第3変化動詞 trahō,-ere の直説法・能動態・現在、3人称複数で主語は fātaです。
retrahunt は「戻す」を意味する第3変化動詞 retrahō,-ere の直説法・能動態・現在、3人称複数です。主語はfātaです。
sequāmur は「従う」を意味する第3変化の形式受動態動詞 sequor,-quī の接続法・現在、1人称複数です。接続法の「意思」を表す表現です。
「運命が(私たちを)運び、連れ戻すところに、われわれは従おう。」と訳せます。

『ギリシア・ローマ名言集』の和訳

『ギリシア・ローマ名言集』(19番)の柳沼訳は次の通りです。

「われらを運命がどこへ率い、どこへ引き戻そうと、あとに従おう」。

言葉の背景:『アエネーイス』の文脈

これは、ウェルギリウスの『アエネーイス』(5.709)に見られる言葉で、困難に直面し思案する主人公アエネーアースに対し老雄ナウテースが励ますせりふです。

「あなたと心はひとつ。運命とも心はひとつ」といった心が感じ取れます。

運命をあらわすラテン語に、fāta (単数は fātum)とfortūna の二つがあり、後者は女性名詞でもあり、しばしば「運命の女神」と同一視されます。

上のラテン語では、中性名詞の fātum が使われているのですが、この言葉のルーツは、「語る」という動詞 for の完了分詞です。この叙事詩の中で、この fātum という語を見るなら、それはユピテル(ギリシア神話のゼウス)の意思、という読み取りが可能です。

アエネーイス (西洋古典叢書)
ウェルギリウス 岡 道男
4876981264

関連表現

Ducunt volentem fata, nolentem trahunt.
運命は従う者を導き、従わぬ者を引きずって行く。(セネカ)

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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