「アブ・ホネストー・ウィルム・ボヌム・ニヒル・デーテッレト」と読みます。
ab は「<奪格>から」を意味する前置詞です。āと同じ意味ですが、母音とhの前ではabの形が用いられます。
honestō は第1・第2変化形容詞honestus,-a,-um(高潔な)の中性・単数・奪格です。この文では名詞として用いられています(「形容詞の名詞的用法」)。ab とともに「高潔な行いから」という意味を表します。
virum は「男」を意味する第2変化名詞 vir,virī m. の単数・対格です。
bonum は第1・第2変化形容詞bonus,-a,-um(よい、立派な)の男性・単数・対格です。virumにかかります。virum bonumは「立派な男を」。
nihil は英語の nothing と同じ意味を持ち、否定文を作ります。中性・単数・主格でこの文の主語です。
dēterret は「遠ざける」を意味する第2変化動詞 dēterreō,-ēre の直説法・能動態・現在、3人称単数です。
「いかなるものも立派な男を高潔な行いから遠ざけない」と訳せます。
セネカの『倫理書簡集』に見られる言葉です(Ep.76.18)。
Ep.76にはほかにも上のラテン語に関連した表現が見出せます。
76.9 In homine quid est optimum? ratiō: hāc antecēdit animālia, deōs sequitur. (人間において最善とは何か。理性である。理性によって人間は動物に勝り、神々の後に従う)。
76.10 Quid est in homine proprium? ratiō: haec recta et consummāta fēlīcitātem hominis implēvit.(人間に固有なものは何か。理性である。これがまっすぐで完全であれば人間の幸福を満たす)。
76.10 Haec ratiō perfecta virtūs vocātur eademque honestum est.(この完全な理性は美徳と呼ばれ、この同じものが立派なものでもある)。

コメント