Quidquid id est, timeo Danaos et dona ferentis.

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「クゥィドクゥィド・イド・エスト・ティメオー・ダナオース・エト・ドーナ・フェレンティース」と読みます。
quidquid は、不定関係代名詞 quisquis の中性・単数・主格です。関係代名詞と同じ変化をします。「・・・するところの人(物)は誰(何)でも」と訳せます。
id は指示代名詞 is,ea,id の中性・単数・主格です。この文では、話者の目の前にある木馬(トロイの木馬)を指しています。
estは不規則動詞 sum(である)の直説法・現在、3人称単数です。
前半は、「それが何であっても」という意味になります。英語で言えば、”Whatever it is”という訳になるでしょう。
timeo は「私は恐れる」という意味の第2変化動詞 timeo,-ereの直説法・能動態・現在、1人称単数です。
et は一般には英語の and に対応しますが、この文で「そして」と訳すと意味が取れません。et は英語の even, also の意味も持ちます。
その場合、「たとえ dona を ferentis するのであれ、私は Danaos を恐れる」というニュアンスになります。
dona は「贈り物」を意味する第2変化名詞 donum,-i n.複数・対格で、ferentis の目的語です。
ferentis (フェレンティース)は、「運ぶ、もたらす」という意味の不規則動詞 fero,ferre の現在分詞・男性・複数・対格で、Danaos と性・数・格が一致します。(ferentis の語末の母音が「長い」点に注意します。ferentesの別形です)。
Danaos は、「ギリシア人」を意味する第2変化名詞 Danai,-orum m.pl. の複数・対格です。
「(目の前にある)それが何であれ、私はギリシア人を恐れる、たとえ贈り物をもってきたとしても。」という意味になります。
ウェルギリウスの『アエネーイス』に見られる表現です。ギリシアの奸計(木馬の計略)を警告する神官ラオコーンのせりふです。彼の警告は聞き入れられず、その結果、トロイアは破滅します。第2巻では、このエピソードをカルタゴの女王ディードーの前で主人公のアエネーアースが物語るという流れです。

アエネーイス
ウェルギリウス Publius Vergilius Maro
4794809557

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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