Nulla dies sine linea.

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語彙と文法

「ヌッラ・ディエース・シネ・リネアー」と読みます。
nulla(いかなる~も~ない、英語のnoに相当)は代名詞的形容詞nullus,-a,-um の女性・単数・主格です。diēsにかかります。
diēsは「日、一日」を意味する第5変化名詞diēs,-ēī c. の単数・主格です。c.というのは「共性」(common gender)の略で、男性名詞としても女性名詞としても用いられます。この文では女性名詞として用いられていることがわかります。もし男性名詞としてであれば、文頭のNullaはNullusとなります。
sine は奪格を取り「~なしに」を意味する前置詞です。
lineā は「線」を意味する第1変化名詞linea,-ae f.の単数・奪格です。
動詞estが省略されています。estは不規則動詞sum,esse(ある)の直説法・現在、3人称単数です。Nulla diēs…est.において「いかなる(Nulla)日も(diēs)あることは(est)ない」となります(Nullaが含まれる文の直訳は難しいです)。
「いかなる(Nulla)一日も(diēs)線(lineā)なしで(sine)ない(est)」が直訳で、「一本の線も引かない日は一日もない」と訳せます。
コス島の画家アペレスの不断の努力を示す言葉で、大プリーニウスの『博物誌』(Plin.35.10.36)に見られる表現です。

文献案内

プリニウスの博物誌 全3巻
プリニウス 中野 定雄 中野 里美 中野 美代

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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