Labor omnia vincit.

「ラボル・オムニア・ウィンキト」と読みます。
labor は「労働」を意味する第3変化名詞 labor,-oris m.の単数・主格です。
omnia は「すべて」を意味する第3変化形容詞 omnis,-e の中性・複数・対格です。この文では名詞として扱われています。「すべてのものを」と訳します。
vincit は「打ち勝つ」を意味する第3変化動詞 vinco,-ere の直説法・能動態・現在、3人称単数です。
「労働は全てに打ち勝つ」と訳せます。
ウェルギリウスの『農耕詩』にみられる表現が元になっています(後述)。
元の表現は labor omnia vicit. (Geo.1.145)で、動詞の時制が直説法・能動態・完了、3人称単数になっています。
オクラホマ州のモットーです。

余談

ウェルギリウスの labor omnia vicit.は、一般に、「不屈の労働はあらゆる困難を克服する」というポジティブな意味で理解されます。典拠はウェルギリウスの『農耕詩』の一行です。

ただし、原文を読むとラボル(労働)はインプロブス (improbus)という形容詞を伴っていて、ポジティブにもネガティブにも受け取れます。というのも、この形容詞(インプロブス)には「粘り強い、不断の」(Lewis & Shortでは”Restless, indomitable, persistent”)という意味と「邪な、悪い」という意味の両義があるためです。

後者の場合、laborを「苦しみ」、vicitを「支配する」という意味でとり、「邪な苦しみが(世界)全体を支配した」と訳せます。これは、ヘーシオドスが描いたパンドラのエピソードや、五時代説話における「鉄の種族の時代」(=争い<剣>と労働<鉄は労働の道具>に満ちた今の世の中)をほうふつとさせる表現と受け取れます。

>>「人間にとって技術とは何か」(Geo.1.118-146)(試訳)

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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