エッセイ

巧言令色すくなし仁

Merentem laudāre jūstitia est.

laudāre の形は第一変化動詞の特徴を示します。

「・・・に値する」を意味する動詞 mereō の現在分詞・単数・対格が merentemです。現在分詞は言ってみれば形容詞です。merentem に限らず、ラテン語の形容詞はしばしば名詞として用いられます。この文では、「値する者を」という意味になります。

laudāre は「ほめる」という意味の第一変化動詞・不定法・現在の形で、この文の主語になります。

jūstitia は「正義」という意味の第一変化名詞・単数・主格で、この文の補語です。

つまり、laudāre することは jūstitia である、というのがこの文の構造です。

「(ほめるに)値する者を(=merentem)ほめることは(=laudāre)正しいこと(=jūstitia)である(=est)。」と分析できます。

この言葉を読むと、逆に、「値しない者」をほめる言葉が少なくない、と感じます。このことを、孔子は「巧言令色すくなし仁」と述べたわけです。古典を読めば、時代を超えて称賛すべきものは何か、自ずと見えてきます。その結果、心がおのずと穏やかになります。似たような感覚は、幼児と接していても感じられます。無心に遊ぶ子どもの姿を見ていると、心のこわばりがとれる思いがします。これは不思議な感覚で、子どもこそ、巧言令色ぬきの世界に生きていると実感します。子どもと心を通わせる言葉のやりとりができたなら、それは本物の言葉です。

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