「モルス・シネ・ムーシース・ウィータ」と読みます。
mors は「死」を意味する第3変化名詞 mors,mortis f.の単数・主格で、文の補語です。
sine は「<奪格>なしに」を意味する前置詞です。
mūsīs は「歌、詩、音楽、学問」を意味する第1変化名詞 mūsa,-ae f.の複数・奪格です。Mūsa と大文字で表記される場合、学問や芸術をつかさどる9人の女神を意味します。
vīta は「人生、命、生活」を意味する第1変化名詞 vīta,-ae f.の単数・主格です。
主語は vīta、補語は mors と考えられます。
動詞 est(sumの直説法・現在、3人称単数)が省略されています。
「歌(学問)のない人生は死(である)」と訳せます。
田中秀央著、『ギリシア・ラテン引用語辞典』によると、Rohde の言葉と記されています。
この表現は、Otium sine litteris mors. (学問なき閑暇は死)と述べたセネカの言葉を思い出させます。

morsが主語でvītaが補語だとすると、「音楽のない死は人生である」となりおかしいです。sine musīsをvītaにかけて「死は音楽のない人生である」としても妙です。この文はいろいろな訳の可能性を検討し、日本語としてよいものを選んだ結果、「歌のない人生は死である」が妥当だと判断します。
ギリシア・ラテン引用語辞典
田中 秀央 落合 太郎
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