火を剣で突く:ホラーティウス

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日本語では「火に油を注ぐ」という言い方がありますが、このことをラテン語ではignem gladio scrutare (火を剣で突く)と言います。これはホラーティウスに見られる表現です。

火に関連した格言を紹介します。

Ignis nōn extinguitur igne. 火は火によって消えない。

ignis をラテン語の辞書で引くと「火」という意味だとすぐにわかります。しかし、igne の形で引いても辞書には載っていません。

igne は一語で「火によって」を意味します。この形を「奪格」と言います。英語なら by や with といった前置詞を用いて表現するところをラテン語は語尾を変えることによって一語で表現します。それだけに簡潔な表現が可能になります。ignis を例に取ると、ignis (火は)、ignis (火の)、ignem (火を)、igni (火に)、igne (火によって)と変化します。これは単数の変化です。複数の変化もあります。覚えるのは大変ですが、これを覚えないと意味が理解できません。

さて、「火は火によって消えない」のいわんとすることは、争いは争いで解決しないという意味でしょう。

Lis litem parit. (争いが争いを生む)と同じ趣旨の言葉だと思われます。

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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