語彙と文法
「スペース・エニム・インケルティー・ボニー・ノーメン・エスト」と読みます。
spēsはspēs,-eī f.(希望)の単数・主格です。文の主語です。
enimは「というのも」と訳せます。
incertīは第1・第2変化形容詞incertus,-a,-um(不確かな)の中性・単数・属格です。bonīにかかります。
bonīは中性名詞bonum,-ī n.(よきこと)の単数・属格です。nōmenにかかります。
nōmenはnōmen,-minis n.(名前)の単数・主格です。
estは不規則動詞sum,esse(である)の直説法・現在、3人称単数です。
「というのも、希望とは不確かなよきことの名前であるから」と訳せます。
「よきこと」とはたとえば将来の成功(ジャンルは何でも)だとすればわかりやすくなるでしょう。
セネカの『倫理書簡集』に見られる言葉です(Sen.Ep.10)。
言葉の解釈
セネカは「希望」をネガティブな言葉としてとらえています。「こうなればいいな、ああできればいいな」という「希望」は、言い方を変えると、「こうならなければどうしよう、ああできなければどうしよう」という不安と紙一重だからです。