「オーランドゥム・エスト・ウト・シト・メンス・サーナ・イン・コルポレ・サーノー」と読みます。
ōrandum と est の組み合わせは動形容詞の述語的用法です。非人称構文になっています。すなわち「ut 以下のように祈られるべきである。」というのが直訳です。
utは「~ということ」を意味する名詞節を導きます。
sit は sum の接続法・現在、3人称単数です。ut の導く従属文では接続法が使われます。時制が現在なのは、主文の動詞estが現在で、それと「同時」であるためです。
mens は「精神」を意味する第3変化名詞mens,mentis f.の単数・主格です。
sāna は mens にかかる第1・第2変化形容詞sānus,-a,-umの女性・単数・主格です。意味は「健全な」です。
inは「<奪格>に」を意味する前置詞です。
corpore は「肉体」を意味する第3変化名詞corpus,-poris n.の単数・奪格です。in がこの奪格を支配しています。「肉体に」。
sānō は「健全な」を意味する第1・第2変化形容詞 sānus,-a,-um の単数・中性・奪格です。corpore にかかります。
「健全な精神が健全な肉体にあるように祈られるべきである。」というのが直訳です。
「健全な精神は健全な肉体に宿る」という言葉が誕生するきっかけとなったラテン語ですが、元の言葉はローマの風刺詩人ユウェナーリスの詩句です(Juv.10.356)。
人間はあれこれ分不相応な欲望を持つが、願い事をするならもっとつつましく「健全な精神が健全な肉体に宿りますように」、つまり、単に「身も心も健康でありますように」とお祈りすべきである、という主張がその詩の中には示されているだけです。
『楽しいラテン語』(土岐健治、井坂民子、教文館)によると、日本で流布している「健全なる精神は健全なる身体に宿る」という句は英語の “A sound mind in a sound body”の邦訳であり、この英語の表現は、ジョン・ロックの『教育論』(1693年)の冒頭に出てくる、とのことです(p.163)。
楽しいラテン語
土岐 健治 井阪 民子
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[…] (株)アシックスのHPの説明では、ユウェナーリスのMens sāna in corpore sānō.に由来するとのことです。 […]