
語彙と文法
「オムニア・ウェルトゥントゥル・ケルテー・ウェルトゥントゥル・アモーレース」と読みます。
omnia は「すべて」を意味する第3変化形容詞 omnis,-e の中性・複数・主格です。
名詞的に用いられ、「万物は」を意味します。
vertuntur は「回転させる」を意味する第3変化動詞 vertō,-ere の直説法・受動態・現在、3人称複数です。受動で使われたとき、「回転する」と訳せます。
certē は「たしかに」を意味する副詞です。
amōrēs は「愛」を意味する第3変化名詞 amor,-ōris m. の複数・主格です。
「万物は流転する。たしかに愛は流転する」と訳せます。
次の行は、vinceris aut vincis, haec in amōre rota est.です。
vincerisはvincō,-ere(勝つ、征服する)の直説法・受動態・現在、2人称単数です。
autは「あるいは」。
vincisはvincō,-ere(勝つ、征服する)の直説法・能動態・現在、2人称単数です。
haecは指示代名詞hic,haec,hoc(これ)の女性・単数・主格です。直前の内容、すなわち「あなたが打ち負かされる。あるいはあなたが打ち負かす」という状況を指します。だとすれば、ふつうは中性(hocまたはhaec)になります。この詩行では補語にあたるrota(輪、車輪)の性と数に一致させてhaecになります。文法用語で「牽引(けんいん)」と呼ばれる現象です。
inは「<奪格>における」を意味する前置詞です。
amōreはamor,-ōris m.(愛)の単数・奪格です。
rotaはrota,-ae f.(輪、車輪)の単数・主格で、文の補語です。
estは不規則動詞sum,esse(である)の直説法・現在、3人称単数です。
「あなたが打ち負かされる。あるいはあなたが打ち負かす。これが愛における車輪である」と訳せます。
ローマの恋愛詩人プロペルティウスの言葉です(2.8.7)。

「万物は流転する」という発想は、古代ギリシアのいわゆる「パンタ・レイ」(万物は流れる)に通じるものです。(パンタ・レイは通常 ヘラクレイトス に帰されます)。
Elegies (Loeb Classical Library)
Propertius G. P. Goold
ĒRIPITVR nōbīs iam prīdem cāra puella:
et tū mē lacrimās fundere, amīce, vetās?
nullae sunt inimīcitiae nisi amōris acerbae:
ipsum mē iugulā, lēnior hostis erō.
possum ego in alterius positam spectāre lacertō?
nec mea dīcētur, quae modo dicta mea est?
omnia vertuntur: certē vertuntur amōrēs:
vinceris aut vincis, haec in amōre rota est.
すでに久しく、愛しいあの娘はわたしから奪われている。
それなのに君は、涙を流すなと、友よ、わたしを制するのか。
憎しみなどというものは、愛から生じる苦いもののほかにはない。
いっそこのわたしを刺し殺せ――そうすれば、わたしはより穏やかな敵になろう。
ほかの男の腕に抱かれている彼女を、わたしは眺めていられるだろうか。
ついさきほどまで「わたしのもの」と呼ばれていた女が、もはやそうは呼ばれないのか。
すべては移り変わる――たしかに、恋もまた移り変わる。
勝つか、負けるか――恋とはそのように回る車輪なのだ。
—
ēripiō,-ere(奪う)
jam prīdem(ずっと以前に)
cārus,-a,-um(最愛の、愛しい)
vetō,-āre(禁止する)
inimīcitia,-ae f.(敵意)
acerbus,-a,-um(苦い、厳しい、無情な、残酷な、つらい)
iugulō=jugulō,-āre(<のどを切って>殺す)
lēnis,-e(穏やかな)
hostis,-is c.(敵)
lacertus,-ī m.(腕)



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