Noli huic tranquillitati confidere.

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「ノーリー・フイーク・トランクゥィッリターティー・コンフィーデレ」と読みます。
noli は禁止の命令文を作る言葉(nōlōの命令法・能動態・現在、2人称単数)で、<不定法>をするな、と訳せます。
この文でいえば、その不定法はconfidereです。
huicは「これ」を意味する指示代名詞hic,haec,hoc の女性・単数・与格です。
tranquillitatiは「無風、平静」を意味する第3変化名詞 tranquillitas,-atis f.の単数・与格です。
confidereは「<与格を>信じる」を意味する第3変化動詞confidoの不定法・能動態・現在です。
「この静けさを信じてはならない」と訳せます。
huicは「今目の前にある」というニュアンスです。
この表現に続き、Momento mare evertitur.(ただちに海はひっくり返される)が来ます。
momentoは「瞬間」を意味する第2変化中性名詞 momentum,-i n.の単数・奪格で「ただちに」と訳せます。
mareは「海」を意味する第3変化形容詞 mare,-is n.の単数・主格。
evertiturはeverto,-ere(ひっくり返す)の直説法・受動態・現在、3人称単数で、主語はmareです。
岩波書店の高橋訳を紹介します。
「いまの静けさを信頼してはいけない。一瞬にして海は覆(くつがえ)る」。
セネカの『倫理書簡集』に出てくる言葉です(Ep.4.7)。

セネカ哲学全集〈5〉倫理書簡集 I
兼利 琢也

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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