語彙と文法
「スッムム・ユース・スッマ・インユーリア」と読みます。
summumは「最高の」を意味する第1・第2変化形容詞 summus,-a,-umの中性・単数・主格です。文の主語です。
jūsは「正義、法」を意味する第3変化名詞 jūs,jūris n.の単数・主格です。
summaはsummus,-a,-um(最高の)の女性・単数・主格です。injūriaにかかります。
injūriaは「不正」を意味する第1変化名詞 injūria,-ae f.の単数・主格です。文の補語です。
動詞として estを補います。estは「~である」を意味する不規則動詞sum,esseの直説法・現在、3人称単数です。
「最高の正義は最高の不正(である)」と訳せます。
法格言として知られ、法律の専門家の間では「法を最高の法則とすることは最大の不法である」、「最厳正の法は最不正の法である」、「最高の法は最高の不法」、「法の極みは不法の極み」などと訳されるようです。
キケローの『義務について』(De Officiis 1.10.33)に見られる表現です。
「法の極みは不法の極み」、J・シュトルー・吉原達也訳、日本法学 第79巻第2号(2013年9月)p.37以下に表題の日本語訳のバリエーションが示されていました。
第3変化名詞jūsの変化(曲用)
単数 | 複数 | |
主格(呼格) | jūs | jūra |
属格 | jūris | (jūrum) |
与格 | jūrī | (jūribus) |
対格 | jūs | jūra |
奪格 | jūre | (jūribus) |
「jūsの複数は主・対格以外を除いて見られない」(『新ラテン文法』p.106とありますが、若干の使用例は認められます。
jūs(正義)を用いた他のラテン語の格言として、次の表現があります。この文のjūraはjūsの複数・対格です。
Audēmus jūra nostra dēfendere. 我々は勇気をもって自分たちの法を守り抜く。
ウェルギリウスの『アエネーイス』に次の表現があります。
1.507-508
Iūra dabat lēgēsque virīs, operumque labōrem
partibus aequābat iustīs, aut sorte trahēbat:
彼女は法と法律を人民に与え、労働の仕事を
等しく割り当てるか、籤によってそれを定めていた。
507 IūraはJūraのことです。「彼女」とはカルタゴの女王ディードーを意味します。