Ne sis miser ante tempus.

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語彙と文法

「ネー・シース・ミセル・アンテ・テンプス」と読みます。
nē は接続法を伴い、「~するな」という禁止の意味を表します。
sīs はsum の接続法・現在、2人称単数です。
miser は「惨めな、あわれな」を意味する第1・第3変化形容詞miser,-era,-erumの男性・単数・主格です。
sīs で想定される2人称単数主格(「あなたは」)とmiser は性・数・格が一致します。
ante は「~より前に」を意味する前置詞で、対格を支配します。
tempus は「時、時期」を意味する第3変化名詞tempus,-poris n.の単数・対格です。
ante tempus で「時が至るよりも前に」という副詞句を作ります。
「そのときが来るよりも先に惨めな気持ちになるな」と訳せます。
直訳すると回りくどくなりますが、いわんとすることは、「先走りして苦労するな」、「取り越し苦労はするな」ということです。
セネカの『倫理書簡集』に見られる表現です(Ep.13.4)。
人間は動物と違い、先のことが見通せる代わりに、訪れるかどうかも不確かな未来の出来事を先に心配する欠点をもつ、という趣旨のことをセネカは指摘しています。

文献案内

表題のセネカの言葉は岩波書店の「セネカ哲学全集」の「倫理書簡集」の13番めの書簡に見出せます。

セネカ哲学全集〈5〉倫理書簡集 I
兼利 琢也

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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