オリンピックが始まると、新聞に「金」の文字が踊ります。金・銀・銅という序列は、古代ギリシア文学でよく見られた「黄金時代」のエピソードと関連しているのかもしれません。すなわち、黄金時代から銀の時代、青銅の時代を経て、今は最悪の鉄の時代に生きているとヘシオドスは言います(『仕事と日』)。
表題の「勝利の女神」ですが、ラテン語だと Victoria となり女性名詞です。-a で終わる単語(細かく言うと第一変化名詞と呼ばれる)は基本的に女性名詞です。Fortuna (運命の女神)も同じです。英語の Victory, fortune の語源です。このように、古典の時代では、抽象名詞が神格化されて用いられることがよくあります。
ギリシア語で「勝利」を意味する名詞はニケー (nike) であり、それが固有名詞として使われたものが。このと呼ばれます。靴のナイキというメーカーがありますが、綴りをローマ字読みして下さい。ニケと発音できますね。古典語はローマ字読みが基本です(英語の発音の方が難しい)。このメーカーは、勝利の女神を会社名にしているわけです。
正義の女神とも言います。英語で「正義」は justice ですが、ラテン語では justitia といいます。綴りを見れば、これも女性名詞とわかります。だてに「・・・の女神」とは呼ばないわけです。そう呼ぶ理由はラテン語名を思い浮かべることで理解できます。