Aquila nōn capit muscās. 鷲は蠅を捕まえない

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Aquila nōn capit muscās. アクゥィラ・ノーン・カピト・ムスカース 鷲は蠅を捕まえない

元はギリシア語のことわざでしたが、いつしかラテン語に訳され広まりました。それだけ共感する人が多かったのでしょう。一言で言えば、大物は小物に頓着しない、という意味になります。あるいは、些細なことにこだわり、難癖ばかりつける人は立派な人間ではない、という戒めとしても使われます。

たしかに小さいことに目くじらを立てる人は器の大きな人間とは言えません。それが自分のストレス発散のためなら何をかいわんやです。しかし、忙しい現代社会を生きる私たちにとって、目の前の些細なこと、小さいことが何かと苛立ちを誘うことも事実です。その原因を作ったのが他人であれ自分であれ。

そんなとき、この言葉を思い出してください。大空を舞う鷲になったつもりで自分の行いを眺めてみると、地上の出来事はみんな取るに足らないちっぽけなことに思えてくるはず。この格言が愛されるのは、人間が本来持つ心のおおらかさを思い出させてくれる点にあると思います。

同じ趣旨の格言に「象は鼠を捕まえない」というバリエーションもあります。しかし、単に体の大きさの対比だけでなく、雄大な大空を背景とした視野の広がりをイメージさせてくれる点で、私自身は「鷲は蝿を捕まえない」に一票を投じたいと思います。

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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